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BtoCで重要な概念「コト消費」とは?「トキ消費」「エモ消費」も解説

2020年09月28日

コト消費トキ消費エモ消費

BtoCのビジネスに関わっていると「モノ消費」や「コト消費」といった言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。これらは消費者の消費傾向を指す言葉であり、昨今は「モノ消費からコト消費へ変化している」と言われています。よりコト消費が広まっていくと考えられる中、既に市場では新たな消費行動も生まれつつあります。

そこで今回の記事では「コト消費とは」をテーマに普及の背景や既に国内で取り組まれている事例などを紹介した後、今後のテーマとなるであろう「トキ消費」「エモ消費」にも触れていきます。
自社のビジネスを今後どのように展開するか悩んでいる方の参考になれば幸いです。

コト消費と呼ばれる消費行動を解説

「時代はモノ消費からコト消費へ」との言葉をよく聞くようになりましたが、そもそもモノ消費とコト消費はどのように違うのでしょうか。コト消費が広がってきている背景とあわせて解説します。

モノ消費とコト消費の違い

まずはモノ消費とコト消費の違いを確認しておきましょう。

モノ消費=商品・サービスを所有すること

モノ消費とは、モノ、つまり商品やサービスを所有すること自体に価値を見いだす消費行動を指します。モノやサービスを所有していることそのものに意味があります。

高度成長期の時代やバブル期には、モノを持つことは豊かさを実感する手段でした。70年代頃には冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビが「三種の神器」といわれ、のちにカラーテレビ、クーラー、自動車の3Cを所有することは、物質的な豊かさの象徴でした。

やがてバブル期になると、ブランド品や輸入車などの海外製品を競って所有するようになります。そういったモノで他人と差別化したり、豊かさの優位性を保ちたいと考える人が多かった時代です。

しかし90年代も後半になると、商品やサービスがあふれるようになり、多くの人がほしいモノがもうない、ほしいモノがわからないと感じはじめます。そして物質的ではなく精神的な満足感を求めるようになった結果、注目されはじめたのが「コト消費」です。

コト消費=商品・サービスを通じて体験を買うこと

コト消費は、商品・サービスそのものではなく、その商品を所有すること、サービスを利用することによって得られる経験や体験を重視する消費行動です。

日産自動車が「モノより思い出」というCMを流しはじめたのは1999年のことですが、モノ消費からコト消費への移行を端的に表したこのキャッチフレーズは、多くの日本人にインパクトを与えました。車というモノそのものではなく、車を買うことによって得られる家族での体験により価値を見いだす時代へ移り変わったことを、多くの日本人が感じたのです。

カメラひとつとったとしても、カメラそのものやカメラを持つことに価値があったモノ消費から、カメラで写真をとることを通じて得られるわくわく感や感動を、より重視するようになりました。コト消費からモノ消費への移行は、精神的な豊かさを重視する人が増えた表れといえるでしょう。

コト消費の広がりの背景

コト消費が広がりをみせることには、どのような背景があるのかを解説します。

インターネットの普及

インターネット普及の影響により消費者行動や心理が変化したことが、コト消費の背景にあると考えられています。

インターネットが普及する前は、「その地に行かなければ買えないモノ」が多くありました。それが今では家に居ながら、日本のみならず世界中のあらゆるモノが手に入ります。
モノを手に入れることが特別なことではなくなった今、モノを買うというだけでも「その地・そのプラットフォームでしか体験できないコト」へのニーズが高まってきています。

インバウンド客の消費行動の変化

観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向 2019年次報告書」によると、「今回の日本滞在中にしたこと」に対する回答は、「日本食を食べること」「ショッピング」「自然・景勝地観光」の順に多く、「次回日本を訪れたときにしたいこと」では、「日本食を食べること」「温泉入浴」「自然・景勝地観光」と続き、「ショッピング」は順位が下がります。

調査対象の65%近くが2回目以上の訪日であることもあわせて考えると、一度ショッピングを楽しんだインバウンド客は、モノ消費からコト消費に移行していっていることが推察できます。インバウンド対策としてもコト消費を意識した価値の提供は重要と言えるでしょう。

参考:訪日外国人の消費動向 2019年次報告書|国土交通省 観光庁

コト消費にまつわる政府の取り組み

コト消費は地方創生や観光などと親和性が高いことから、コト消費と絡めた取り組みが国主導で行われています。ここからは、政府としてどのような取り組みを行っているのかを紹介します。

経済産業省の取り組み

経済産業省は、2015年から地域内外から顧客を呼び込み消費につなげる魅力的な地域作りの手法を検討する「コト消費空間づくり研究会」を開催しています。
とりまとめられた報告書では、コト消費空間作りを導入するには、
①公的な位置づけと責任を持ったマネジメント組織
②網羅性、自立性、持続性を持った安定的な財源
③リーダーシップ、マーケティング能力などを持ったマネジメント人材
の3点が必要とまとめています。

現行法では一定の限度があるため、地域(自治体)がエリアを限定して集中的にコト消費空間を開発・管理するシステムの構築を検討していくとしています。

参考:コト消費空間づくり研究会-とりまとめについて(METI/経済産業省)

観光庁の取り組み

観光庁では、2019年から徴収が始まった国際観光旅客税を活用し、インバウンド客の消費拡大につながる体験型コンテンツを開発する「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」を実施しています。

初年度には最先端ICTを活用した観光、潜在的な観光資源、夜間の観光資源の3分野をモデル事業のテーマに設定。中部国際空港での「VR忍者体験」や鳥取県石見地方での「石井神楽体験」などが採択されました。

参考:最先端観光コンテンツ インキュベーター事業 | 観光地域づくり | 政策について | 観光庁

コト消費の先進事例

企業はどのようにコト消費を取り込もうとしているのでしょうか。
ここでは製造・販売業の例として無印良品の事例と、観光業の例として琴平バスの事例を紹介していきます。

無印良品銀座店の事例

無印良品銀座店
無印良品銀座店

無印良品は、2019年4月に東京・銀座に「無印良品 銀座」をオープンしました。銀座という東京でも高級百貨店が多く集中するエリアで、比較的安価な価格帯の商品をそろえる無印良品がどのように集客するのかが注目を集めていました。

無印良品は、「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」という企業理念のもと、あえて特徴を出さずに、ナチュラルでシンプルなデザインの商品をそろえているのが特徴です。
「無印良品 銀座」でも、その独特の統一された世界観を強みに、20〜30代ぐらいの既存の無印ファンを多く集客しています。加えて周辺の高級百貨店に足を運んでいたような、年齢層が高めで比較的裕福な顧客を取り込むのにも成功しました。

リピート客を取り込むために、子ども向けのワークショップや大人向けの絵付け教室など、年間300件ほどの体験型イベントを開催していることも特徴です。

無印良品の商品を販売することを目的としない「コト消費」に注目して、共感型、体験型販促に力を入れていることも、従来の百貨店とは一線を画した取り組みです。

琴平バスの取り組み

琴平バス
琴平バス

経験や体験を重視するコト消費を求める消費者を主な顧客としていた観光業界は、コロナ禍において苦戦を強いられています。そのようななか、香川県琴平町に本社を置く「琴平バス」の取り組みが注目を集めています。

以前から香川のご当地名物である讃岐うどんの店を巡るツアーなど、地域密着型のツアーを展開していた琴平バスでは、有料コンテンツとして「オンラインツアー」を開発しました。

単に観光バスツアーを動画として流すのではなく、あらかじめ地域の特産品を参加者の自宅に送り、ツアー中に食を楽しむ時間を挟むなど実体験を重視しています。道の駅に立ち寄るときにはお土産をお取り寄せできるECサイトを紹介するなど、実際にツアーに参加している気分を味わえる工夫を施しました。

ツアー終了後には参加者と交流する機会を設けるなどしたことで、今では参加者は全国各地に広がり、若い層や個人旅行派だった層の取り込みにも成功しています。

現在消費が落ち込んでいる観光業ではありますが、「コト消費」を意識したオンラインの取り組みが功を奏している事例と言えるでしょう。

コト消費はトキ消費・エモ消費へ

ここまではコト消費について解説してきましたが、昨今はスマートフォンやSNSの普及につれて、トキ消費・エモ消費にシフトしつつあるといわれています。トキ消費、エモ消費とはどのようなものなのかを解説します。

トキ消費とは

そこに行かなければ経験・体験できなかったはずのコト消費は、スマートフォンとSNSの普及で、自分ではなくほかの誰かが体験したことを疑似体験できるようになりました。そこで注目されるようになったのが、「その瞬間・場所」でしか味わえないトキを楽しむ「トキ消費」です。

トキ消費は、時間や場所が限定されていて再現できないこと、自ら参加することに価値と意味があること、自ら参加し貢献が実感できることがコト消費と異なります。

トキ消費は、たとえば野球の日本シリーズ最終戦が例に挙げられます。その年の日本一を名乗るチームが選ばれる特別な試合を、球場で応援するという体験は二度と再現できず、自分が「参加」するという特別感、そして応援しているチームと一緒に闘うことで貢献していることを実感できるのです。

エモ消費とは

エモ消費の「エモ」はエモーショナル(emotional=感情)を略した言葉です。エモ消費は、モノやコトではなく、精神的な満足度を重視する消費行動を指します。

たとえばクラウドファンディングやオンラインサロンに参加することなどが、例として挙げられます。これらの消費行動の共通点としては人と人が繋がって、感情をシェアすることにあります。エモ消費では、いかにして消費者を繋げるプラットフォームや仕組みを作り上げるかが重要なポイントと言えるでしょう。

まとめ

人々の消費活動は、インターネットの発達と並行して変化を続けてきました。モノを実際に手にすることが裕福さの証明だった時代は遠くなり、今ではトキ消費にしろエモ消費にしろ、いかに精神的な満足感をえられるかが重視されるようになってきています。

求められる消費の形はこれからも変化していくと考えられるため、消費者の消費行動のがどう変わっていくのかは、常に注視していく必要があるでしょう。

この記事を書いた人

QEEE編集部

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