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アグリテック(AgriTech)とは?意味・技術例・注目分野とスタートアップ紹介

2020年09月09日

スマート農業アグリテックAgriTech

アグリテックは農業とテクノロジーを掛け合わせた言葉で、日本では「スマート農業」が推進されています。AIやIoT、ロボットなどのテクノロジーによって農業の課題を解決し、人手を最小限におさえて高品質な農作物を安定的に供給しようとするものです。

この記事では、アグリテックについて、日本の農業の現状や注目分野、注目のスタートアップ企業を紹介します。

アグリテックとは

アグリテック(AgriTech)とは、農業を表す「Agriculture」と、技術を表す「Technology」を組み合わせた造語です。近年では、様々な業界がテクノロジーを取り入れており、末尾に「テック」と付く言葉が多くあります。

例えば、AutoTech(オートテック)は自動運転技術や車載データ活用を示す言葉、FinTech(フィンテック)は金融システムの技術革新を示す言葉です。

また、アグリテックと似た言葉として、フードテックがあります。フードテックは食全体に対しての技術であるのに対し、アグリテックは農業分野に特化した言葉です。農作業の効率化を図ったり、農業技術の可視化、分析することを可能とするものです。

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農林水産省では「スマート農業」として推進

日本では、農林水産省で「スマート農業」としてアグリテックを推進しています。スマート農業とは、ドローンなどのロボット技術や、情報通信技術を使った農地管理システムを活用した農業を指します。

これらの技術を利用し、従来の農作業よりも少ない人手、労力で作物の生産が可能となります。また、作物の精密管理ができるので、高品質生産が可能となるメリットもあります。

農林水産省では、これらの取り組みに力を入れており「令和2年度スマート農業総合推進対策事業」(※1)を立ち上げるなど、スマート農業の取り組みを積極的に支援しています。

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日本の農業の現状

日本では、平成30年におけるGDP(国内総生産)のうち農業の占める割合は約1%となっています(※2)。

平成31年度の農業分野の就業人口は総人口の約1%に留まっており、そのうち約70%が65歳以上、平均年齢も67歳前後となっています(※3)。

これらの現状を鑑みても、スマート農業の技術を積極的に取り入れていくことは急務であるといえます。

アグリテックで解決できる農業の課題

アグリテックで解決できる農業の課題として、大きく次の4点があげられます。それぞれについて、具体的に解説します。

・農業の効率化
・熟練農家のノウハウの継承
・都市型農業
・農業における働き方改革

農業の効率化

アグリテックの分野では、農業を効率化することが可能です。例えば、今まで手作業で行っていた作物の収穫をAIロボットに任せます。作物の成熟具合をロボットに学習させることで、収穫可能なものを判別することができます。

その他にも、ドローンを使って自動的に種子を蒔く植林や、自動肥料散布なども農業の効率化に一役を買っています。

熟練農家のノウハウの継承

農業従事者の高齢化が進む中、熟練農家のノウハウを次世代に継承することも課題の一つです。アグリテックの分野では、長年培われてきた豊富な知識や経験をデータ化し、次の世代へ引き継ぐことを目指します。

データ化した知識やノウハウをAIやロボットに活用することで、新規就農者や経験の少ない労働者でも、高品質の作物を効率的に生産できます。また、データ化したノウハウと作物の育成状況などの画像や、過去の気温や降雨量などの気象条件といったビックデータを解析することで、より効率的に農業を行うことが可能となります。

都市型農業

従来の農業では、広大な土地が必要でした。しかし近年、アグリテックの分野では、限られた土地や空間で、消費地のすぐ近くで行われる都市型農業に注目が集まっています。

高層ビルの屋上や使われなくなった倉庫を利用して作物を育てる垂直農法や、野菜と魚を同時に育てるアクアポニックスなどの農法が都市型農業にあたります。

都市部で農業を展開することで、食品輸送費を減らし、ビルなどの施設で使用されるエネルギーを農業に再利用できるという利点があります。

農業における働き方改革

アグリテックの技術を利用した農業の働き方改革も進められています。従来の農業は、休みがなく、重労働なイメージがありました。しかし、AI技術やロボットを活用すれば作物の様子をデジタル管理できます。

また、自動運転技術を搭載したトラクター、農作物の自動収穫ロボットなどの導入により、労働負担を減らすことも可能です。農林水産省の農業の「働き方」実践ワークブック(※4)を元に、働き方改革の実行宣言をしている農業経営者も増えています。

アグリテックで注目される分野

アグリテックで注目をされている分野には、下記のようなものがあります。

・AI、IoT利用
・ドローン
・植物工場

AI、IoT利用

アグリテックで注目をされている分野の一つが、AIやIoTの利用です。AIを搭載したカメラやドローンを活用することで、広大な土地を持つ農場でも作物の育成状況を手元のタブレット端末で確認することができます。また、AIが収穫時期や肥料の量などを判断することも可能になります。

その他にも、人工衛星から収集した気象データをもとに、農作業に適している土地を見つけるシステムなどもあります。これらはAIによる農業支援システムとして開発が行われているものです。

IoTの分野では、市場の傾向や消費者のニーズに沿った作物の生産ができるシステムや、走行時に土の成分を分析できるトラクター、農作業の進捗情報を記録しておけるシステムなどが登場しています。

ドローン

ドローン導入もアグリテックでは注目をされています。農業用ドローンの役割は、大規模な農地への種子・肥料・農薬の散布や、搭載カメラによる農作物の育成状況把握などです。

ドローンの操縦はシンプルで、手軽に使うことができます。農業用ドローンの普及率は平成29年3月から平成30年末にかけて約6倍に増加しています。また、農林水産省では小型で容量の少ないドローンでも効率的に散布可能な農薬の開発を積極的に進めています(※5)。

植物工場

植物工場とは、人工光、または太陽光を人為的に制御して、安定的に品質の高い植物を栽培する施設のことを指します。光の調節だけでなく、作物の育成に必要な温度・湿度の管理、CO2の濃度、空気の流れなども細かく管理します。これもアグリテックの分野に含まれるものです。

植物工場は閉鎖的な空間で育成をするため、害虫などの影響を受けずに、無農薬で栽培ができるという利点もあります。

日本のアグリテックスタートアップ

日本国内のアグリテックスタートアップ企業と、それぞれの企業が展開している製品について紹介します。

株式会社 ファームノート(Farmnote)

株式会社 ファームノート(Farmnote)
株式会社 ファームノート(Farmnote)

株式会社ファームノートは、クラウド牛群管理システムFarmnoteを展開しています。Farmnoteは、スマートフォンやタブレット端末などで簡単に牛群管理ができるマネジメントプラットフォームです。牛の出生日や品種、血統、性別を管理できるだけでなく、発情予定日や休薬期間中の個体などを一元管理することができます。

また、タッチ操作だけで病歴や獣医師の治療履歴などの個体情報も入力できます。ストーリー機能を利用して、牛の一生をタイムラインで確認することも可能です。

Farmnoteは、酪農、食用牛、つなぎ牛舎にも対応しています。小規模農家から数千頭を飼育する大規模牧場まで利用ができます。

デザミス株式会社(U-motion)

デザミス株式会社(U-motion)
デザミス株式会社(U-motion)

デザミス株式会社は、牛の行動モニタリングシステムであるU-motion®を展開しています。IoTデバイスを牛に装着することで、牛の体調変化や発情の兆候などを管理するシステムです。

U-motion®のIoTセンサーから、リアルタイムで牛の起立や歩行、反芻、採食、飲水などを把握することが可能です。細かな行動を管理することで、牛の状態に合わせたケアを効率的に行うことができます。また、ベテラン飼育員でなくても牛の管理を行えるのも利点です。

株式会社KAKAXI(KAKAXI)

株式会社KAKAXI(KAKAXI)
株式会社KAKAXI(KAKAXI)

株式会社KAKAXIでは、太陽光のみで稼働できるモニタリングIoTサービスKAKAXIを展開しています。KAKAXIは、電気工事や通信工事の必要はなく、無線通信が行える場所ならばどこでも稼働可能です。カメラ付きのモニタリングデバイスとAIを利用した画像解析を併用し、自然環境の変化を解析することができます。

農業の分野では、作物の生産現場を可視化します。広角カメラで遠隔から作物の育成状況が観察できるので、生産の効率化が図れます。また、記録した生産現場のデータを消費者にも開示することで、より安心して食品の消費をしてもらえるようになります。

ルートレック・ネットワークス(ZeRo.agri/ゼロアグリ)

ルートレック・ネットワークス(ZeRo.agri/ゼロアグリ)
ルートレック・ネットワークス(ZeRo.agri/ゼロアグリ)

ルートレック・ネットワークスの展開するZeRo.agri(ゼロアグリ)は、AIシステムを利用した潅水施肥ロボットです。日射量や土に含まれる水分量を考慮し、必要最適量の水と肥料を供給します。少量の水で、いかに効率良く栽培するかという点に着目して開発されました。

従来の栽培方法に比べて、水と肥料の節約が可能で、作業量も削減できます。また、作物の品質向上、収穫量の増加も実現可能です。

ゼロアグリ1台につき最大6区画を管理することができます。区画ごとにAIが必要最適量の培養液を分析するので、定植時期の異なる作物も同時に育成可能です。

まとめ

ここまで、日本の農業の現状や、アグリテックで注目されている分野、スタートアップ企業の製品について紹介しました。農業分野に関しては、生産者の高齢化や人手不足、異常気象への対応など解決しなくてはならない問題が山積しています。

これらの問題の解決には、AIやIoTの技術、ロボットなどによる作業の自動化が欠かせません。アグリテック、スマート農業の推進は急務であり、今後もこの分野で様々なビジネスモデルが展開されていくと予想されます。


※1
参考:農林水産省|スマート農業
URL:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/

※2
参考:農林水産省|GDP(国内総生産)に関する統計
URL:https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/01.html

※3
参考:農林水産省|農業労働力に関する統計
URL:https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

※4
参考:農業の「働き方改革」経営者向けガイド実践ワークブック2018.6
URL:https://www.maff.go.jp/j/study/work/attach/pdf/index-18.pdf

※5
参考:農業用ドローンの普及に向けて(農業用ドローン普及計画)|平成31年3月農林水産省
URL:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/pdf/hukyuukeikaku.pdf

この記事を書いた人

QEEE編集部

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