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【最新版】医療業界におけるAR/VR技術の動向

2021年08月03日

医療ARVR

ARやVRと聞いて、ゲームやエンターテイメントでの利用をイメージしていませんか?実は医療現場での活用も期待されており、アメリカやイギリスではリハビリ・新人外科医のトレーニング・手術のシミュレーションなどが開発・導入されています。制度上の問題や技術的な課題といった問題はありますが、AR/VRによる医療革新は着実に進行しています。本記事では、AR/VRを用いた医療現場の今について解説します。

AR/VR医療の今

AR/VRを活用した医療現場の事例

現在の医療現場ではAR/VRを用いた技術が注目されています。代表的な3つを見ていきましょう。

1つ目は、ARを利用した画像診断の正確性向上です。MRIやレントゲンを用いた病態の画像診断は、技術が進歩した今でも、3%から5%の確率で誤診を引き起こします。検査して得られた画像を、医師が脳内で3次元に組み立てながら診断を行うため、どうしてもミスが発生してしまうのです。AR技術を利用すれば、画像から構築した3DモデルをARに映し出すことが可能となります。

2つ目は、VRによる病院生活でのストレス軽減です。児童に痛みを伴う手術や治療を施す際、VRゲームを遊ばせて気を逸らします。代表的なサービスである「AppliedVR」では、20分間のゲームで患者の痛みを24%軽減させる成果を挙げました。

3つ目は、新人医師を訓練するためのVRトレーニングです。特に外科手術シミュレーションの開発が盛んに行われており、従来のトレーニングプログラムよりはるかに効率的に訓練可能と評価されています。アメリカでは大学病院や大手医療機器メーカーで導入されており、将来の外科教育現場で重要な役割を果たすでしょう。

世界の医療現場でも注目をされているAR/VR技術

2019年にアメリカで行われた世界最大級医療カンファレンス「HIMSS 19」でも、AR/VR技術を用いた医療技術を多数の企業が発表しました。

1.Philips Healthcare社
自社の血管造影プラットフォームとマイクロソフトのMRデバイス「Hololens2」を組み合わせたAR技術を発表しました。画像診断を利用しながら、より低侵襲な血管カテーテル治療を実現します。

2.Abbott社
心臓カテーテルの検査及び治療に用いるトレーニング用VRを発表しました。Abbott社は血管系疾患治療に関する医療機器のリーディングカンパニーであり、開発には同社の技術が生かされています。

3.GE Healthcafre
汎用画像解析システムを開発しているTomTec社と共に、心臓エコーを3Dモデルに変換するVRを発表しました。診断装置からの情報をもとに、色や質感を完璧に再現したモデルをバーチャル空間に出現させます。

4.NovaRad社
手術前に体内を透視できる手術支援システム「OpenSight Augmented Reality System」を発表しました。マイクロソフトの拡張現実バイザー「HoloLens」を利用しており、患者体内の2D・3D・4D画像を、患者自身に重ねて投影することが可能です。手術時間の短縮や、より効果的な手術計画立案に役立てられます。

スタートアップ企業だけでなく大手医療機器メーカーも多数参加しており、注目度の高さが伺えます。医療機器メーカーが特に注目しているのが、トレーニングに関するAR/VR技術です。以前から製品の訓練プログラムを提供して顧客満足度を引き上げてきたため、より効果的なトレーニングを行えるAR/VR技術に対する投資・研究が進んでいます。

イギリスの本腰

アメリカと並んで、医療現場にAR/VR技術の導入に積極的なのがイギリスです。2019年にはスタートアップ企業Oxford Medical Simulation社により、糖尿病患者の緊急処置をテーマとしたVRトレーニングが2つの病院で試験的に導入されました。

このトレーニングはインスリンを主力商品とするNovo Nordisk社の資金で開発されており、イギリスの国民保健サービスであるNHSの支援プログラムの一環で行われています。

試験の結果を確認したのち、同プログラムをイギリス全土の病院に拡大する予定です。NHSは「2040年までに医療スタッフの働き方に影響を与える技術」としてAR/VRを6番目に挙げており、真剣な取り組みがうかがえます。

このプログラムは、世界中の病院で採用されるデファクトスタンダードとなる可能性も秘めています。WHOの予測によれば、世界の糖尿病患者は今後も増加していくと予測されており、日本でも2017年時点で328万存在すると報告されました。

重症低血糖など緊急搬送を必要とする場面も多数存在しており、少子高齢化が進む日本では特に深刻な問題です。イギリス発のプログラムが、世界中に広がるかが注目されています。

医療用AR/VR市場規模

医療で用いられるAR/VR技術の市場は、今後も拡大を続けていくと予想されます。AIとの組み合わせやMR(複合現実)への発展など、技術の進歩も日進月歩で進むでしょう。コンサルティング会社シード・プランニングの調査によると、今後の医療用AR/VR市場規模の推移予測は以下の通りです。

VR・AR・VR技術の市場規模予想
出典元URL:https://www.seedplanning.co.jp/press/2017/2017073101.html

2021年には153億円の市場規模が2026年には342億円になるとされており、急速な拡大が予測されています。医学教育、治療、診断、リハビリの4つが主要分野です。一貫して医学教育の分野が大きなウェートを占めており、新人医師を短期間でベテランに育成するための製品開発が盛んに行われています。

市場規模の膨張に伴い、AR/VRに欠かせないヘッドセット市場の成長も予測されています。IT専門調査会社IDC Japanは、ヘッドセット市場の出荷台数予測を発表しました。

ヘッドセット市場の出荷台数予測
出典元URL:https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1804/20/news002.html

2017年から2022年にかけて、市場規模はおよそ6倍になるという予測です。始めはVR用ヘッドセットの需要が圧倒的ですが、徐々にAR用ヘッドセットの需要も伸びていきます。

VR/AR治療最前線

最後に、VR/ARを利用した医療活用の最前線について解説しましょう。

2018年に日本で開催されたグローバルカンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」は、ヘルスケア業界をけん引するトップランナーたちが、数十に渡るセッションを繰り広げるカンファレンスです。AR/VRに関連するセッションも行われましたが、その中でも1日目のセッション「仮想現実(VR/AR/MR)が実現し、変革する知覚」が注目されました。

セッションの前半で解説されたのは、肢の一部を失った患者用のロボット義手の動かし方を、VRによるリハビリプログラムで学習する技術です。ロボット義手は神経接続技術「TMR(Targeted Muscle Reinnervation)」を用いて自分で動かせるようになっており、戦場での負傷による退役軍人のリハビリなどに利用する予定です。

リハビリプログラムは、アメリカの企業であるSuperGenius社によって開発されました。元々VRゲームを開発していたSuperGenius社がヘルスケア事業を開始したのが、VRによるセラピーが、PTSDなどの神経疾患に対する治療効果が高い点に着目したからです。バーチャル空間に存在する架空のロボット義手を操作する訓練は、トレーニングとして高い効果が期待できます。VRを用いたトレーニングで、ロボット義手を肉体の一部として知覚させることが可能です。

後半では、日本でVRを用いた幻肢痛治療を研究する、株式会社キッズの猪俣一則さんが紹介されました。幻肢痛とは、失った手や足がまるで存在するかのように錯覚する幻肢が現れ、その後猛烈な痛みに襲われる症状です。脳が失った手足からの電気信号がないことに危機感を感じ、痛覚を刺激することで発生するといわれています。

これを治療するため、VRで失った手足を再現し、脳に知覚させるのが猪俣さんの研究です。バーチャル空間に現れた手足は、自分の意思で動かすことができます。実際の手足の動きを計測し、患者が自分の幻肢に抱くイメージ通りのものを出現させることが可能です。

それによって脳に刺激を与え、痛覚への刺激をストップさせます。自身も幻肢痛に悩んでいた猪俣さんは、この技術を利用することで、30年悩まされた痛みをなくすことに成功しました。即時効果も高く、訓練開始から4~5分で痛みが緩和され、1~2週間持続させることが可能です。

このように、今後のVR/AR技術は、知覚や神経に影響を与え、手術や薬物に頼らず治療を行うセラピーとしても発展していきます。

まとめ

日本であまり知られていない、AR/VRを技術を利用した医療革新について今回は解説しました。失敗やミスが許されない医療現場において、仮想現実を出現させる技術は非常に魅力的です。医療関係者はリスクなしで手術練習や新技術開発を行うことが可能となり、患者は仮想現実でリハビリや痛みの緩和が出来ます。

少子高齢や人材不足など、医療に関する問題が山積している日本でも、問題解決の切り札となるでしょう。医療関係の仕事に就いてる方は、AR/VR技術の動向に注目してください。

この記事を書いた人

QEEE編集部

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