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絶対評価・相対評価とは?適切な評価方法を選ぶためのポイントを解説

2021年11月25日

人事評価人事評価制度絶対評価相対評価

日本の従来の人事評価方法として相対評価が挙げられますが、昨今では絶対評価にも注目が集まっています。この相対評価と絶対評価は、「どちらが優れているのか」といった類の物ではありません。評価目的や対象によって適宜選択することが大切です。

今回の記事では相対評価と絶対評価、それぞれの評価方法に関するメリット・デメリットを中心に解説した上で、「自社に適した評価方法はどちらか?」という問いに対して判断のポイントをお伝えしていきます。

「相対評価」と「絶対評価」とは

「相対評価」と「絶対評価」は人事考課における評価の考え方となっており、それぞれにメリット・デメリットが存在します。これらの評価方法を参考に制度を整備し運用していくのであれば、それぞれの特徴を抑えておく必要があります。

相対評価と絶対評価の違いは、大まかに以下のように整理できます。

相対評価 絶対評価
評価基準 従業員間でスキルを比較 固定された基準に基づき比較
全体の評価バランス とりやすい とりにくい
数値化し難い業務に対する評価 しやすい しにくい
評価軸 明確でない 明確
モチベーション 保ちにくい 保ちやすい

評価基準や評価バランスといった点で、両者には違いがあります。詳しくは次の項から解説していきます。

相対評価とは

相対評価のイメージ図

相対評価とは、特定のメンバー間で他社同士を比較・優劣をつけて評価を行う手法です。従来の日本では相対評価が一般的な評価機軸でした。

相対評価は部署やチームなどの集団内で評価を行いたいときに適しています。従業員間の状況を比較して判断を行うため、従業員間のスキルに差があるとはっきり分布割合に反映されることになります。

全体の評価の調整がしやすい

相対評価ではあらかじめ「Aランクは上位10%」といったように、ランクと分布割合を決めてから評価を行います。そのため評価を受けられる人数がランクによって最初から決まっている分、何人ほど昇給するのか、といった点が明確になりやすいのがポイントです。

事前の人件費コントロールがしやすい点が、評価を行う側にとっての相対評価から得られるメリットです。

目に見えない業務を評価しやすい

相対評価では明確な固定された評価基準が存在しません。比較対象になる従業員間のスキル状況などを把握して評価に利用します。

そのため数値化しにくい業務(目に見えない業務)に関しても、評価を行いやすい点がポイントです。導入スピードの点においては、相対評価のほうが明確な基準設定が必要な絶対評価よりも優れていると言えるでしょう。

所属する部署・チームで評価が変わる

相対評価の弱点の1つが、所属する部署やチームで評価が変わる可能性がある点です。

もしAの部署のスキルが全体的に低く、Bの部署のスキルが全体的に高いとします。部署ごとに相対評価を利用すると、Aの部署に所属しているスキルに問題がある社員と、Bの部署に所属している優秀な社員が同じ評価になってしまうリスクがあります。

相対的という基準だけに、対象となる集団の内容によって評価にばらつきが出てしまい、不公平感が出てしまうのが相対評価のデメリットです。

評価理由が分かりにくい

相対評価では集団間でスキル等を比較・評価へ使います。それだけに固定された数値基準が存在するわけではありません。数値基準を設定しなくてよい点は評価側のメリットになりますが、同時に評価される側のデメリットにもつながってしまいます。

具体的には評価理由に納得できず、どうすれば評価されるのか判断ができなくなる、といった問題が出てくるでしょう。

成績下位が固定されてしまう

相対評価では従業員が消極的になってしまう可能性があります。低い評価を付けられると業務に関してスキルがないと思われたくない余り、返って業務をやりたがらないといった心情が出てくるリスクがあるからです。

そのため相対評価を採用する場合でも、積極的に業務へ挑みスキルを上げた従業員を適切に評価できる仕組み作りが重要になります。

絶対評価とは

絶対評価のイメージ図

絶対評価とは目標達成率などのあらかじめ設定した数値基準に基づき、個々の従業員スキルを判断して評価を行う手法です。一人一人を個別に評価したい場合は、絶対評価のほうが適しています。

企業が従業員に求めるスキル等を評価基準に上手く据えられれば、従業員全体のモチベーション向上やスキルアップなどにもつなげられる評価手法です。

評価軸が明確

絶対評価では絶対的な数値基準があらかじめ定められています。つまり相対的に従業員間のスキルを比較されて判断されることがありません。

このため評価内容に関して納得感があり、達成に関して積極的になりやすいのがポイントです。ただし目標設定に関しては上司の指導の下、各従業員ごとに決めるといった手順が必要になります。

モチベーションアップにつながる

相対評価だと最悪の場合、評価相手になる従業員へ協力しないといった足の引っ張り合いを引き起こすリスクがあります。会社全体のイメージも悪くなるのでなるべく避けたいトラブルです。

しかし絶対評価の場合、他人とスキルを比較されて評価されることはありません。このため一人一人が個々の目標へ向かってモチベーションを維持しやすく、社内環境の悪化を防げるといった効果があります。

全体の評価の調整が難しい

絶対評価の弱点は、昇進といった判断基準に用いる際に起こります。

相対評価ではあらかじめ分布割合が決まっているので、どれだけ昇進するのか、といった判断がすぐにできます。ただし絶対評価の場合、実際にどれくらいの従業員が高く評価されるのかは分かりません。極端な事例ですが、対象者全員が目標を達成して評価されるケースも考えられます。

ですから評価格差が付きにくく、絶対評価を直接的に昇進といったインセンティブにつなげるのは難しいというデメリットがあるでしょう。

成果が分かりにくい業務は評価し難い

絶対評価の目標は固定かつ数値化しておく必要があります。このため、成果主義の業務であれば取り入れやすいですが、目標設定がしにくい業務では採用が難しいというデメリットがあります。

たとえばバックオフィス業務の場合、直接利益が発生するわけではないのでどこに判断基準を置くのか悩みます。何時間働いたか、といった基準も人によって業務の質が違うので明確な基準にはなりえません。適切な評価には工夫が必要です。

人件費が膨らむ可能性がある

もし絶対評価により複数人が高い評価を受け昇進してしまうと、人件費がそれだけかさむことになります。事前にどれだけの従業員に対して人件費高騰が起きるのかは判断が難しいところです。

この点相対基準は分布割合が決まっているため人件費高騰を押さえられます。両者のメリット・デメリットを理解して適切に採用してみましょう。

絶対評価が注目されつつある理由とは

近年では相対評価に代わって絶対評価が注目されつつあります。

理由はまず、従業員側にとって評価基準が分かりやすく明示されるからです。評価基準が明確なのでなぜそのような評価を受けたのか、またどうすれば評価が改善されるのかなどがはっきり分かります。結果的に自分で目標設定を行って努力を重ね、自主的に能力開発に勤しむモチベーションに繋がるでしょう。
同時に、評価の透明性が上がれば、社員が自社に抱く信頼度も上がります。結果として生産性が上がり、企業全体に良い影響を与えると考えられます。

自社に合った評価方法の決め方とは

ここまでは、相対評価と絶対評価の違い、絶対評価が注目を集める背景などを解説してきました。
絶対評価は「正当に評価されている」という実感を得られやすい評価方法ではありますが、全ての組織・企業に適しているとは限りません。評価を行う理由や業務内容で使い分けを考えなければ、メリットを享受することはできません。
ここからは実際に社内で人事評価方法を整備する際、どのように検討を進めるべきかを解説していきます。

どちらの評価が適切?見極める2つのポイント

相対評価と絶対評価、両者の手法には得意不得意があるため見極めが重要です。ポイントとなるのは以下の2点です。

  • なぜ評価を行うのか
  • 客観的な評価が可能なのか


それぞれ解説します。

なぜ評価を行うのか

まずはなぜ評価を行うのかを明確にしましょう。例えば、

  • 決められた予算内で人件費を抑えたい
  • 役職決めを適切に行いたい


といった場面では、全員が同列の評価になる可能性がある絶対評価よりも、能力を比較しやすい相対評価が適しています。一方で、

  • 一人一人が自発的にスキル向上へ動ける環境を作りたい
  • 会社の企業風土や価値観などを従業員へ刷り込みたい


といった場面では、一人ひとりに目標を意識させやすい絶対評価が適しています。

客観的な評価が可能なのか

客観的な数値目標を決める必要がないのが相対評価、決める必要があるのが絶対評価です。ですから客観的に数値化して評価ができるか否かで、どちらの手法を採用するか決めるのも有効です。

  • 率先的に他従業員をよい方向へ誘導できたか
  • コミュニケーションを活発に行い関係性構築ができたか


といった基準で判断する場合は、相対評価が有効です。

  • 営業の実績
  • 増加した売上


といった項目で成果を判断できる場合は絶対評価が利用可能です。

評価方法を組み合わせた人事評価例

改めて人事評価を行う理由や業務内容を整理した結果、どちらも甲乙つけがたいという結論になることも考えられます。その場合は、相対評価と絶対評価を組み合わせて評価制度を整えることも可能です。
ここからは具体的な考え方として、事例を3つほどご紹介していきます。

評価段階によって使い分ける例

どちらか片方だけの評価を使うと不満が出てしまったり、評価が緩和されて高く評価される社員が増えすぎるといった問題が発生する可能性があります。その場合は、別の評価を段階に分けて行うことで総合的に判断する方法があります。
具体的には、

  • 一次評価…人材育成の観点から絶対評価で評価
  • 二次評価…相対評価でチェック・補正を行い給与を決定


といった方法で段階ごとに評価を使い分けることで、精度が上がる可能性があります。

階級によって使い分ける例

階級によって評価を使い分ける方法もあります。たとえば

  • 管理職系の社員には絶対評価を行う
  • 役職がない社員には相対評価を行う


という使い分けの事例があります。
上記の使い分けが有効なのは、管理職系が成果基準で収入に差が生じやすいという特徴があるからです。ただし役職がないからといって社員に相対評価を強制し過ぎると、モチベーション低下といったリスクが発生します。

評価項目によって使い分ける例

先ほども説明しましたが、数値化しやすいか、それともそうではないかで評価を使い分けるのも重要です。

  • どれだけ各スキルがあるのか
  • どれだけ行動して業務へ貢献したか


といったあいまいになりがちな項目は相対評価が適しているでしょう。

  • 商談のクロージング数
  • 商品の販売成功数


といった評価項目は数値化できる絶対基準に指摘した項目です。

まとめ

今回は相対評価と絶対評価、それぞれの特徴や活用方法などをご紹介してきました。

相対評価は具体的な成果が数字で出せない業務に対して評価がしやすいことに加え、給与の管理や昇進などの社内調整的な面でもメリットがあります。絶対評価は個人の目標管理や人材育成的な面でのメリットが強く、「適正な評価をしてもらえている」という実感に繋がりやすい点が魅力です。
現在では透明性確保といった観点から絶対評価に注目が集まっていますが、相対評価が絶対評価に劣っているわけではありません。人事評価を行う理由や業務内容から、バランスを見つつ人事評価制度を整備していくことが重要です。
両者の評価方法の違いを理解しながら、評価者にとっても評価される者にとっても納得できる人事評価制度を構築してみましょう。

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この記事を書いた人

QEEE編集部

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