レポート

自動運転バスの最新動向

2020年02月25日

自動運転

2020年から、いよいよレベル3(指定条件下でシステムに運転を任せられる)の自動運転が日本で解禁されます。世界的にも自動運転に対する取組が進んでおり、将来的には今公表されているものよりもさらにレベルの高い自動運転車を公道で見られるかもしれません。

自動運転は、移動手段が抱えているさまざまな課題解消ができる技術として期待されています。特に自動運転バスは、最も一般への普及が望まれているものの一つです。

今回は自動運転に興味がある方向けに自動運転バスとは何か、そして最新動向や課題などについても分かりやすく解説していきます。

自動運転バスへの期待

自動運転バスとは、自動運転システムが搭載されたバスを指します。交通手段であるバスを自動運転化することで、現状バスが抱えている問題を解決できるかもしれないとして注目を集めています。

自動運転バスに何が期待されているか

自動運転バスには、次のようなことが期待されています。

  • バス運転手など、人手不足の解消
  • バス運行のコスト削減
  • 高齢者の移動手段の確保

バス運転手など、人手不足の解消

日経新聞参考記事:五輪、バス運転手400人不足
参考記事:五輪、バス運転手400人不足 近畿など派遣交渉も難航(日経新聞)

現在バス業界では、運転手など人材が大幅に不足しています。若者が敬遠してなかなかバス業界に就職したがらない、少子高齢化によりバス運転手も高齢化し、退職者が増えていることなどが理由です。

上記参考記事のように、2020年夏に開催される「東京オリンピック」でも、バス台数は確保できたものの肝心の運転手が400人ほど不足しているという情報が発表されています。

バスが自動運転化されれば、将来的には運転手がいなくてもバスを走行させられます。そうすれば少ない人数で効率よくバス運行をまかなえるようになり、人手不足も解消するでしょう。

現在日本で走行している自動運転バスはドライバーの乗車が必須ですが、技術や法律が成熟すればレベル4(指定条件下で、ドライバーがまったく運転に関与しないで走行ができる)以上の完全自動運転バスが公道を走れるようになるかもしれません。

バス運行のコスト削減

現在のバス運行においては、バス購入やその他費用に対して利益が釣り合わないところが多いです。

貨物を載せるなど、利用者を目的地に運ぶ以外の方法で利益を得ようとするバス会社もあります。しかしそれでも、根本的なコスト問題の解決にはなりません。また補助金に頼って運行を続けているバス会社もあり、課題が山積みになっています。

高レベルの自動運転バスが実現すれば、運転手など運行に必要な人件費を削減できます。さらに自動運転バスに対して、新たなビジネスモデルも模索されています。

自動運転バスに付随するさまざまなビジネスモデルが登場すれば、ただコストを削減できるだけでなく収益拡大も見込めるでしょう。そうすれば、補助金に頼らず自社だけで利益をまかなえるバス会社も増えるはずです。

高齢者の移動手段の確保

路線バスや路面電車など公共交通手段の運行数も、年を経るにつれて減少する傾向にあります。特に過疎地では移動手段不足が深刻で、上手く移動ができない高齢者が増えています。

自動運転バスが公道で一般的に走るようになれば、運転手に頼らず運行数を増やせます。そして収益を得ながら、上手く過疎地でもバス運行できるようになるでしょう。結果的に過疎地でも、お年寄りが無理なく遠距離移動できるようになります。

また最近は、高齢者の自動車事故が問題になっています。いろいろなところで自動運転バスが運行されれば利便性も高まり、免許を返納してバスを利用する方も増えていくでしょう。

自動運転バスのロードマップ

「官民 ITS 構想・ロードマップ 2019」
出典:「官民 ITS 構想・ロードマップ 2019」

上記「官民 ITS 構想・ロードマップ 2019」では、自動運転バスなど移動サービスの自動運転レベルに関するロードマップを公表しています。それによると、

  • レベル4の自動運転サービスを、地域限定で2020年までに実現することを期待
  • レベル2以上の高速道路でのバス自動運転を、2022年以降に実現するよう努力

となっています。

レベル4の自動運転サービスについては、2020年内にレベル3が解禁されるのは分かっていますが、レベル4の解禁まで一気に動くのは難しいでしょう。倫理的な問題など、課題が残っているからです。

ただしレベル4相当の高度な自動運転システム自体は実験が進んでおり、今後の公道走行解禁に期待が高まります。

また高速道路での自動運転利用は現在難しい面もありますが、レベル2であればすでに自家用車では搭載している車も多いためハードルはそう高くなさそうです。(ステアリング操作やスピード調整など、複数の運転操作を支援できる)

自動運転バスの最新動向

ここからは、自動運転バスの最新動向をご紹介していきます。

  • 群馬大学が各地域で自動運転バスの実証実験を行う
  • 埼玉工業大学がAI自動運転バスの実証実験を進める
  • ソフトバンクと自治体などが提携して自動運転バス運行が開始される
  • 外国でも自動運転バス実証実験が進む

群馬大学が各地域で自動運転バスの実証実験を行う

「群馬大学」は2020年1月から、前橋市と日本中央バスと協力して自動運転バスの実験を始めています。

この実験は公道を使ったものであり、全国初の2台を実証実験に使う取組で注目されています。土日祝日限定で、3月1日まで限定運行する予定です。運行バスはレベル2相当ではありますが、「MaaS(交通手段をクラウドでつなげて利便性を高めたサービス)」などの試験も兼ねており思い切った実験になっています。

群馬大学ではさいたま市など他地域でも自動運転バスの実証実験を行っており、今後も自動運転バス分野を主導していく存在になっていくでしょう。

埼玉工業大学がAI自動運転バスの実証実験を進める

埼玉工業大学「彩の国ビジネスアリーナ2020」出展
出典:埼玉工業大学

「埼玉工業大学」は2020年1月、「彩の国ビジネスアリーナ2020」でAI自動運転バスの試乗会などを行いました。

AI自動運転バスは人工知能による運転制御を行えるバスで、機械学習で障害物を認識するなど高度な走行を可能にしています。装置は後付け可能で、既存のマイクロバスなどに別途取付して自動運転化できる手軽さなども魅力です。

現在試乗に使われたAI自動運転バスはレベル3相当ということで、2020年度以降公道で走行する機会も増えていくかもしれません。埼玉工業大学も全国各地で自動運転に関する実証実験を行っており、群馬大学と同じく自動運転バス分野のリーダーとなっていく可能性があります。

ソフトバンクと自治体などが提携して自動運転バス運行が開始される

ソフトバンクグループ「SBドライブ」自動運転バス実用化
出典:ソフトバンクニュース

「ソフトバンク」グループの「SBドライブ」は2020年1月に、公道で走行する自動運転バスを実用化すると発表しました。

茨城県境町と協力して2020年4月から、定常運行自動運転システムつきのバスを運行開始します。自治体が公式に定常運行自動運転バスを走行させるのは、国内初です。自動運転バスは小型モデルで、SBドライブのスタッフが運転手として同行します。

バス自体はレベル2区分ですが位置情報やレーダーなどで障害物を正確に検知する、遠隔操作が可能など高レベルのシステムを搭載しており、実質レベル4相当の力を持っています。

将来的にレベル4の公道走行が解禁されれば、本来の力を発揮して無人で走行を行う姿が見られるかもしれません。

外国でも自動運転バス実証実験が進む

日本だけでなく、外国でも自動運転バスに関する実証実験は進んでいます。

ドイツの「ベルリン交通局」は、公道で自動運転バスを試験的に運用しています。ドイツは日本と同じく自動車技術に定評があり、自動運転分野にも力を入れている印象があります。

また中国では、IT企業大手「バイドゥ(百度)」が自動運転バスの実証実験を進めています。AIなどを活用した先進的な自動運転バスは運転手の制御なしで走行可能で、かなり高いレベルを獲得しています。

アメリカだけでなく他の国も自動運転技術を進化させている事実は、覚えておくと後で役に立つかもしれません。

自動運転バスの課題

自動運転バスにはさまざまなメリットがありますが、実証実験などの中で課題も浮き彫りになっています。

  • エラーやトラブルにどう対応するか
  • どうやって法整備を進めていくか
  • どうやってコストを下げるか

エラーやトラブルにどう対応するか

自動運転バスでは、システムが周囲の障害物などを認識しながら走行を行います。ただし走行環境は一定ではなく、状況が変わる可能性もあります。

たとえば急に茂みの多い場所に入ると、位置情報やレーダーなどが上手く機能しなくなり周囲の認識に失敗する可能性が高くなります。運転手をなくす場合、こういった環境の変化にも対応できるシステムの構築が必要不可欠です。

現在は「5G」や「エッジ・コンピューティング」など、自動運転の課題を解消する技術の研究が進んでいます。将来的には他のITも組み合わせて、自動運転バスが運行できる環境を整備することが望まれます。

またマシントラブルの際も、システムが認識して対応策を考えられる仕組み作りが必要です。

どうやって法整備を進めていくか

自動運転技術は最新の技術である分、法整備も遅れています。自動運転を広く普及させるにあたって大きな課題となるのが、責任を誰に持たせるかです。

レベル3以下の自動車では、基本は運転手が事故時の責任を負うことになります。しかしレベル4以上では完全にシステムが自動走行を行うため、事故時に誰が悪いのか明確に責任追及するのが難しくなります。

この他乗車客の生命を確保するため、他の人の生命を犠牲にしてよいのかなどの倫理的課題も未解決です。

こういった責任所在や倫理的課題に対して明確な解決方法が見つからないと、自動運転バスの普及もできません。

どうやってコストを下げるか

自動運転バスを使うと、人件費などコストが削減されます。しかしまったく人員が必要ないわけではなく、車掌などバスの管理を行う人員は必要です。

今後自動運転バスが普及するにあたって、どうバス管理を集約させてコストコントロールを行うかは重要な問題になります。

また現状では、自動運転バス自体や関連システムに掛かるコストが大きいです。各メーカーが今後バス会社などがスムーズに自動運転バスを導入できるよう、コストダウンに大きく動き出せるかもポイントになってきます。

まとめ

今回は自動運転バスに期待される内容や最新動向、課題などについてご紹介してきました。

自動運転バス普及により運転手不足の解消や、高齢者の移動手段確保などが可能になります。日本を始め各国が自動運転バスにかかわる取組を進めており、技術はさらに進歩するでしょう。

ただし普及には、法整備や導入コストなどが課題となってきます。自動運転バスの最新動向を、これからも自分の目でチェックしてみてください。

この記事を書いた人

QEEE編集部

QEEEmagazineはマーケター、人事、エンジニア、営業企画などの企画者に役立つコンテンツをそれぞれ領域のスペシャリストが発信していきます。

投稿一覧へ

他サービスはこちら