経理・財務

財務会計と管理会計の違いとは?企業会計の基礎知識を解説

2021年06月17日

予算管理原価管理財務会計管理会計

企業会計は、その目的と報告対象によって財務会計と管理会計に分類することができます。財務会計は企業会計原則に則り、主に株主や債権者向けの情報であり、他方の管理会計は経営者が経営管理を行うための情報です。

財務会計と管理会計では、内容が大きく異なります。それぞれが持つ特徴、機能について網羅的に説明します。

企業会計とは

企業会計とは企業活動を「お金」に換算して記録し、利害関係者へ共有することです。数多くある企業が一定の尺度や基準で計算・記録することで、企業の状態をステークホルダーに公平に共有することが可能になります。

企業会計は「財務会計」「税務会計」「管理会計」に分けられます。税務会計は税金の計算のために行われる会計で、財務会計と税務会計は比較的近い関係にあります。

財務会計と管理会計の違い

財務会計と管理会計はその目的と報告対象が異なるため、性質の異なる会計です(表1)。
財務会計の報告対象は社外の利害関係者(投資家、債権者)であり、収益や資産、負債といった財務状況を開示することが目的です。別の会社の状況とと比較できるよう企業会計原則に則り、貸借対照表、損益計算書といった決められた財務諸表を作成します。

管理会計は経営者や部門の責任者に対し、会社や個別事業の収益状況を報告し課題解決や意思決定の情報を提供することを目的としています。実務的には、中期計画や予算計画を作成し、月々の実績をフォローします。計画に対し差異が発生していれば、原因を追究し課題の解決を図ります。

表1:財務会計と管理会計の比較


財務会計 管理会計
利用者 株主、債権者(外部) 経営者、管理者(内部)
目的 財務状況の報告 経営管理、意思決定
形式 財務諸表など レポート(自由)
期間 1年または四半期 月々、半期、年度(都度)

一般的に会計というと、全ての企業が行う財務会計を指します。

あわせて読みたい

会計ソフト・会計システムを比較!選び方やクラウド型製品...

会計ソフトは種類もメーカーも多く、 最近ではクラウド型会計ソフトも増えており、 導入時や移行時に迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。多数ある会計ソフト・会計システムを比較、検討できるよう、QEEE編集部おすすめの会計ソフト・会...

企業会計原則とは

企業会計原則とは、1949年に大蔵省企業会計審議会が公表した会計基準のことです。「一般に公正妥当と認められる会計慣行」を要約したものであり、法的拘束力はありませんが、企業会計において従うべき基準とされています。

企業会計原則の7つの「一般原則」 は最も重要とされています。


1.真実性の原則

財政状態や経営成績に関して真実の報告を求める原則です。この「真実」とは唯一絶対という意味ではなく、複数認められている会計処理や法律の範囲内で適正であること、つまり「相対的真実」を表しています。



2.正規の簿記の原則

すべての取引について、正規の簿記(=複式簿記)に従って正確な会計帳簿の作成を求める原則です。

正確な会計帳簿とは、網羅性、検証可能性、秩序性を備えた帳簿のことです。


3.資本取引・損益取引区別の原則

資本取引は資本そのものを増減させる増資や減資などのことです。損益取引は利益を増減させる取引のことです。これらを区別することで、利益獲得のための事業活動の結果の損益(期間損益)を把握することができ、企業の状態を正しく把握することができるのです。

またこの原則では、特に資本剰余金と利益剰余金を混同してはならないとされています。

利益剰余金は利益の留保で、対して資本剰余金は企業活動の元手となるものです。資本剰余金の外部流出は企業が身を削ることを意味するため、これらは区別することが企業の存続に必要とされます。

4.明瞭性の原則

利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示することを求める原則です。

具体的には、財務諸表を分かりやすく作成すること(明瞭表示)、重要な会計方針などは注記すること(適正開示)と解されています。


5.継続性の原則

企業が一旦採用した会計処理は毎期継続することを求める原則です。

企業会計は、減価償却費計算のように複数の会計処理が認められる場合がありますが、一度採用した会計処理をみだりに変更することは前の期との比較を難しくして利害関係者の判断を誤らせることにつながるため認められていません。

6.保守主義の原則

将来の不確実性に備え、保守的な会計処理を求める原則です。

保守的な会計処理とは、収益や売上は「確実性が高いもののみ」を計上し、費用は「早め多めに」計上することを言います。

例えば、期末に在庫の簿価(取得額)と時価を比較し、低い方を評価額とする低価法などが該当します。

保守的な会計処理を行うことで、企業内に財産を多く残すことができ、不測の事態に備えることができます。

ただし利益を隠したりするなどの過度に保守的な会計処理は禁止されています。

7.単一性の原則

企業は、株主総会のため、銀行から融資を受けるため、税務申告のためなど複数の財務諸表を作成しますが、元となる会計帳簿は一つであることを求める原則です(実質一元・形式多元)。

株主用と税務申告用に会計帳簿を分ける二重帳簿の作成などを禁止しています。

財務会計とは

財務会計とは、株主や債権者などのステークホルダーに対し、決算書を通じて企業の経営成績や収益状況を報告することです。

会計に関連する法律としては、投資家保護を目的とした金融商品取引法や株主、債権者保護を目的とした会社法があります。これらの法律の中で、財務諸表(会社法では計算書類)の作成が義務付けられています
財務諸表は基本として次の三つの計算書からなり、財務三表と呼ばれます。

  • 貸借対照表(バランスシート、B/S)

資産、負債、純資産で構成され、決算日時点の財政状態を知ることができます。

  • 損益計算書(プロフィット&ロス、P/L)

収益、費用、利益で構成され、企業の損益を知ることができます。

  • キャッシュフロー計算書(C/F)

期首から期末にかけての現金の動きや増減を知ることができます。

全ての企業は、毎年財務諸表を必ず作成します。会社法上の大会社(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上)や株式を上場している企業は、四半期ごとの作成が義務付けられています。

財務会計の目的は利害関係者への情報提供

財務会計の目的は、外部の利害関係者へ企業の正確な財務状況の情報を提供することです。

外部のステークホルダーに正しく開示するため、企業会計原則を遵守し、日本会計基準などの統一ルールに基づいて財務諸表を作成する必要があります。

企業会計原則の遵守

財務会計は、企業会計原則の遵守が求められますが、企業会計原則は法律ではありませんので法的拘束力を持っていません。

しかし金融商品取引法会社法は、一般に妥当と認められる公正な会計慣行による財務諸表の作成を求めています。公正妥当=企業会計原則と考えられており、企業会計原則に反する情報開示は法律違反となる可能性があります。

統一のルールで財務諸表を作成

財務会計は、企業会計原則をベースとした「日本会計基準」に則って処理が行われます。

「日本会計基準」は日本独自の会計基準であり、過去は旧大蔵省の審議会が設定していましたが、現在は企業会計基準委員会が主体となっています。

企業会計原則には、7つの原則で構成される一般原則の他に、「損益計算書原則」「貸借対照表原則」があり、損益計算書や貸借対照表はこれらの原則に基づいて作成されます。

日本会計基準の他にも次のような会計基準はグローバル対応として必要とされるケースが増えいています。

  • 米国会計基準

アメリカで株式を上場する場合は、米国会計基準に基づく必要があります。

  • IFRS(Internasional Financial Reporting Standards)

国際会計基準審議会が作成した会計基準です。世界共通の会計基準として近年採用する企業が増えています。

財務会計の機能

財務会計の機能として、外部の利害関係者に対して情報を提供する機能と利害を調整する機能の2つがあります。

情報提供

投資家は、財務諸表から企業の将来性を予測し投資の意思決定を行います。また銀行などが融資を行う際は、貸借対照表から企業の担保能力や返済能力を把握します。

その他にも従業員、取引先、顧客などのステークホルダーにとっても安定的で長期的な関係が築けるかどうかの判断に財務会計の情報は有用です。

利害調整

株主は、自分が出資したお金を経営者が上手に運用し、配当金や株価が上昇することを期待します。しかし経営者が企業の資産を私物化するなど、必ずしも誠実に経営をするとは限りません。

財務会計は、経営者が委託された資金をどう使って、いくらの収益を上げたのかを明らかにすることで経営者と株主の利害を調整する役割があります。

債権者と株主の間でも利害の調整が必要です。銀行などの債権者は、貸付金回収の観点から配当での資金流出を好みません。一方、株主は高い配当を期待しますので、利害の対立が発生します。

財務会計で剰余金を算出し分配可能額を明らかにすることで、債権者と株主の利害を調整することができます。

管理会計とは

管理会計とは、経営者に対し経営管理に必要な情報を提供する会計のことです。実務としては、3~5年程度の中期計画を作成し、年度や半期単位に計画をブレイクダウンして月次で実行をフォローする、いわゆるPDCAサイクル確立することにあります。

計画を数字で作成し、管理するので企業の成長や問題点を可視化、共有化することができます。経営者は、管理会計を参考に市場の動向、競合他社の動き、自社の強みなどから今後の事業戦略や収益目標を策定します。

あわせて読みたい

管理会計システムの機能とは?おすすめ12選と選び方を解説

管理会計システムは企業内部の業績管理のための会計システムのことで、プロジェクト単位や部門単位、製品単位の予算管理や収益状況をリアルタイムに可視化するものです。手軽に導入できるクラウド型の管理会計システムも増えています。管理会計は、外部向けの財...

管理会計の目的は社内利用

管理会計は企業の将来の戦略を決める機密性の高い情報ですので、社外へは非公開が原則です。

情報の内容にもよりますが、事業部別の収益情報は営業部門の管理職まで、工場別の原価部門情報はコスト管理責任者までなど社内でも情報の開示は限られる場合が多いです。

大型の設備投資案件や事業の撤退など極めて機密性の高い情報は経営幹部のみに報告されます。

作成に公的なルールはない

管理会計は社内利用が主ですので、企業会計原則といった公的なルールはありません。各企業のニーズに応じて、必要な資料を必要なタイミングで作ることになります。

期間も自由に設定できますが、通常は月単位で分析し、半期や年度単位でまとめることが多いです。

経営分析や業績管理に利用する

企業規模が大きくなり、複数の商品や事業を展開するようになると財務会計の情報だけでは抱えている課題が見えづらくなります。

管理会計を導入することで、品種や事業部単位での収益性、生産性などの経営分析が行えるようになり、投資や撤退といった経営判断が合理的にできるようになります。

また事業部、部門ごとの収益やコストが把握できますので、どの事業部の売上をいくら伸ばせば良いのか?どの部門のコストを何%削減すれば良いのか?など具体的な目標の立案、実績の評価といった業績管理に利用することができます。

管理会計で使われる手法

管理会計の活用方法は様々ですが、分析手法についてはキャッシュフロー分析と損益分岐点分析、管理手法については予実管理と原価管理について詳しく見てみましょう。

キャッシュフロー分析

キャッシュフロー分析は、設備投資などの意思決定に利用する分析手法です。

設備投資は、取得から除却するまでの使用期間が決まっているプロジェクト案件です。事業の評価は通常利益で判断しますが、設備投資については得られるキャッシュで考えます。

キャッシュフロー分析には、正味現在価値法(NPV)や内部収益率(IRR)があり、将来得られるキャッシュを現在価値に割り戻して投資額と比較します。

複数の設備投資案件があれば、最も得られるキャッシュの多い設備投資案件を採用します。

損益分岐点分析

損益分岐点とは、売上とコストがイコールになる、つまり利益がゼロとなる「売上高」や「販売数量」のことです。

損益分岐点を把握することは、営業の販売目標設定や目標利益達成の施策立案に不可欠です。

損益分岐点分析の計算は、まず費用を変動費と固定費に分解することから始まります。

  • 変動費

売上(生産、販売)に比例して増減する費用のことです。原材料費、外注費、燃料費、電気や水道代などです。

  • 固定費

生産量や販売量に関わらず一定額が発生する費用のことです。労務費、減価償却費、修繕費などです。
変動費、固定費の区分は、業種によって異なります。各企業が費用の発生実態や考え方に応じて自由に設定します。

例えば、売上高1,000円(@100円×10個)のとき、変動費200円、固定費480円、利益320円だったとします。
売上1個に対する変動費は20円(200円÷10個)ですので、この商品の損益分岐点の販売数量は、

100x - 20x - 480 = 0 ∴6個となります。

損益分岐点分析を行うと、経理の知識がなくても販売量から利益を計算することができ、経営者、営業部門の目標設定や利益管理に役立てることができます。

また売上、変動費、固定費に分解することで、利益を増やす施策をどの項目で実施し、誰が実行するのかなどを明確にするといったメリットがあります。

予算管理

管理会計の基本は予算管理になります。通常半期ごとに各部門で予算を立て、経理が全体を集約します。経理は、集計した予算を費目別や部門別、場合によっては商品別に原価を振り分けて営業部門が立てる販売予算とぶつけることで、予算収益を計算します。

予算収益が経営者の利益目標に到達していない場合、追加の施策を営業部門や製造部門へ依頼するなどします。

立案した予算通りに販売やコストが推移しているかを確認することが予実管理になります。通常は毎月フォローし、半期単位で結果をまとめて評価します。

あわせて読みたい

予算管理システムの機能と選び方【おすすめ14システムの...

予算管理システムは、各部門の予算の収集、編成といった予実管理を自動化・効率化するものです。Excelなどを使い手作業で行っている企業も多いかもしれません。予算管理システムの利用によって、編成や管理の効率化だけでなく、予算達成に向けた施策の追加...

原価管理

原価管理とは、目標とする利益を達成するため、原価の標準を設定し、実績を比較することで原価低減に取り組むことです。

原価管理は、製品1個あたりの標準原価を設定し、実績の原価を標準に近づけていく管理手法です。原価計算にはさまざまな要素があり、原価計算システムなどで情報を一元管理することでタイムリーな原価計算が可能となります。

あわせて読みたい

原価管理システムとは?機能と選び方、原価管理の基本を解説

原価管理システムは、製造業における原材料や製造にかかるコスト、プロジェクトにおける労務費などの費用を一元管理して計算し、原価の維持や低減を図ることで利益を最大化するためのシステムです。 原価を構成する要素は複雑で変動も多く、サプライチェーン...

まとめ

財務会計は、主に社外のステークホルダーに向けた情報発信であり、法律や会計制度に基づいて行われます。管理会計は、社内の経営者や管理者に向けて、経営管理や意思決定のための情報提供を目的としています。

様々な違いがありますが、財務会計で集約したコストなどの情報を必要に応じて細分化したり、集約したりすることが管理会計ですので、財務会計と管理会計は相互に関連性があります。

企業規模が大きくなると扱う金額が増えますので、会計ソフトを導入することで効率化することができます。財務会計と管理会計の違いを理解し、上手に活用してみましょう。

この記事を書いた人

QEEE編集部

QEEEマガジンはマーケター、人事、エンジニア、営業企画などの企画者に役立つコンテンツをそれぞれの領域のスペシャリストが発信していきます。

投稿一覧へ

関連記事

他サービスはこちら