コラム

リーンキャンバスとは?顧客の課題を意識して事業計画書を作成しよう

2021年08月24日

リーンキャンバス

リーンキャンバスとは、新しい事業やプロジェクトのビジネスモデルを検討・俯瞰的に理解するために利用できるフレームワークです。
この記事ではリーンキャンバスについて、ビジネスモデルキャンバスとの違いや構成する9つの要素を解説していきます。作成時のポイントもご紹介しているので、実際に事業計画を立てる際や見直す際にご活用いただければ幸いです。

リーンキャンバス(Lean Canvas)とは

リーンキャンバス(Lean Canvas)とは、ITベンチャー起業家で「Running Lean」の著者でもあるアッシュ・マウリャが2010年に自身のブログで紹介した新規事業の立ち上げの際に行うフレームワークのことです。

リーンキャンバスは、スイスの学者アレックス・オスターワルダーが2008年に発表した「ビジネスモデルジェネレーション」という名の本で提唱したビジネスモデルキャンバスと呼ばれるフレームワークを、とくにスタートアップ企業向けに応用したものです。

リーンキャンバスのリーン(Lean)は「無駄がない、効率的」という意味を持ちます。スタートアップに際して無駄な工程をそぎ落とし、アイデアを効率的に素早く事業化するために実践するフレームワークです。

リーンキャンバスではビジネスの要素を後ほど詳しく解説する9つの項目に分け、1枚の紙にまとめます。事業を1枚の紙面上で俯瞰的に理解したうえで課題や解決方法を検討できることが、リーンキャンバスの特徴です。

リーンキャンバスのメリット

リーンキャンバスで事業を検証することには、以下の2つのメリットがあります。

簡単に作成できる

リーンキャンバスは、あらかじめ9つのフレームに分けられた1枚の紙にビジネスモデルの要素を書き入れるだけなので、誰でも簡単に作成できることがメリットです。作成コストや時間をかけることなく、事業を検証できます。

メンバー間の認識を統一しやすい

ビジネスモデルを1枚の紙にまとめておくと、メンバー間の認識を統一しやすいこともメリットです。

事業の概要を1枚の紙面上で全体的に俯瞰できるため、複数人がかかわっていても、常に立ち返ることで認識の齟齬が生じにくくなります。変更が必要になっても修正しやすく、誰が見ても一目で理解できることから、メンバー間の情報格差が発生する心配もありません。

ビジネスモデルキャンバスとの違い

リーンキャンバスと混同されやすいものに、ビジネスモデルキャンバスがあります。ビジネスモデルキャンバスはリーンキャンバスのもととなったフレームワークで、同じように1枚のキャンバスに描かれた9つの項目に基づき事業を分析しますが、内容に違いがあります。

ビジネスモデルキャンバスが、よりリソース要素に注目しているのに対し、リーンキャンバスでは課題や価値などにフォーカスしています。

これはビジネスモデルキャンバスはすでに事業が機能し、「パートナー」や「リソース」がある程度明確になっている既存企業向けであるのに対し、リーンキャンバスはそういった要素が不確定で重要度が低いスタートアップ企業向けであるためです。

リーンキャンバスでは、そのような企業活動を意識した項目の代わりに、スタートアップにおいて重要となる「顧客の課題」や「目標とする指標」などが加えられています。

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9つの要素と作成手順

リーンキャンバスは、図のように以下の9つの要素で構成されています。

リーンキャンバス
  1. 顧客セグメント・アーリーアダプター
  2. 課題
  3. 独自の価値提案
  4. 解決策
  5. 顧客流入元
  6. 収益の流れ
  7. コスト構造
  8. 主要指標
  9. 優位性

リーンキャンバスは、上記の順番で埋めていくことが推奨されています。まず商品やサービスに対して対価を払ってくれる顧客について考え、続けてその課題を考察します。そして販売方法、KPIを考えた末に、優位性を明らかにするのです。

それではそれぞれの要素について、「レシピアプリ」の開発を例として詳しく解説していきます。

①顧客セグメント・アーリーアダプター

顧客セグメントとは、商品やサービスの顧客になると考えられる人たちの属性のことです。価値を感じお金を払ってくれる人がいなければビジネスは成り立たないため、リーンキャンバスにおいては、もっとも重要な項目とされています。顧客セグメントを埋めるときには、思い浮かぶさまざまな種類の顧客をすべてリストします。

続けて最初のターゲットとするアーリーアダプターを指定します。アーリーアダプターとは、初期に商品やサービスを受け入れて、ほかのユーザーに影響を及ぼすと考えられる顧客層を指します。顧客のなかでもとくに問題が深刻・緊急であり、早く課題を解決したいと考えているであろう顧客を指定します。アーリーアダプターを明確にしておくと、商品企画の方向性をより明確にできることがメリットです。

<レシピアプリ>
顧客セグメントの例:
・一人暮らし
・自炊が苦手
・料理に手間をかけたくない

アーリーアダプターの例:
・仕事をしている一人暮らしの20〜30代女性

②ユーザーが抱える課題

顧客として挙げたユーザーが抱えていると考えられる課題を書き出します。顧客視点に立って課題を考えることで、顧客のニーズをつかみましょう。同時に現在どのような代替品や代替サービスを利用しているかを洗い出しておくと、自社商品をどう差別化するか考えられます。

<レシピアプリ>
課題の例:
・料理をする時間がない
・食材を買ってもあまる
・残った食材でレシピを考えられない
・料理をすると同じ品を何日も食べるはめになる

代価品の例:
・クックパッド
・クラシル

③独自の価値提案(UVP)

独自の価値提案は、自社の商品やサービスにしかない独自の強みを指します。Unique Value Propositionを略してUVPとも呼ばれます。リーンキャンバスのなかでは、もっとも難しい要素です。

顧客が自社の商品やサービスの何に対して対価を払ってくれるのか、利便性なのか価格なのか、それとも機能に対してなのかを明確にしましょう。

<レシピアプリ>
独自の価値提案の例:
・15分以内でできる簡単料理がメイン
・材料ができるだけあまらない工夫
・残った料理をアレンジするレシピ

④解決策(Solution)

解決策には、②で考えた課題を解決する方法を書き出します。③で考えた自社の商品やサービスの強みが課題をどう解決するのか、②で書き出した代価サービスと比較しながら考えるとスムーズです。

<レシピアプリ>
解決策の例:
・主婦に協力を依頼
・あまりやすい食材を調査
・限られた食材でできる1週間分のレシピを提案

⑤チャネル

チャネルには、顧客に商品やサービスをどのように届けるのか、流通経路を書き出します。ターゲットとする顧客セグメントがどこで情報を入手するのかを考えて、アクセスしやすい経路を考えましょう。

<レシピアプリ>
チャネルの例:
・自社サイト
・SNS(Instagram、Twitter)

⑥収益の流れ(Revenue Streams)

収益の流れでは、顧客からどのように収入を得るのか、価格を含めて検討します。1回の買い切りなのか、定期契約なのか、サブスクリプションモデルなのか、さまざまな方法から自社の商品やサービスにあった収益モデルを考えます。②で考えた代価サービスの価格を参考にするといいでしょう。

<レシピアプリ>
収益の流れの例:
・月額/年額のサブスクリプション
・500円/月
・5,000円/年

⑦コスト構造(Cost Structure)

コスト構造には、人件費や広告宣伝費といった、解決策を生み出すためにかかるコストを記入します。初期段階では金額までは明らかにできないことが多いので、発生すると考えられる費用を書き出すだけで問題ありません。

<レシピアプリ>
コスト構造の例:
・サーバー代やドメイン代などサイト制作費
・人件費(開発・運営)
・宣伝広告費(Web広告)

⑧主要指標(Key Metrics)

主要指標は、ビジネスの成長を計測するための指標です。ビジネスモデルを成功させるための中間目標値(KPI)を設定することで、最終的な到達点(KGI)への道筋が見えてきます。収益目標以外に、顧客定着率や解約率、SNSのフォロワー数などモニターするべき指標をまとめましょう。

<レシピアプリ>
主要指標の例:
・無料会員登録者数
・有料会員登録者数
・レシピ閲覧数
・SNSフォロワー数

⑨競合優位性(Unfair Advantage)

競合優位性とは、競合他社と比較しての優位性を記入します。他社には簡単には真似できないものは何なのかを考えましょう。もし競合優位性がなければ、どうすれば優位性が得られるかを考えていく必要があります。

<レシピアプリ>
競合優位性の例:
・1食の材料費が300円以下
・プロの料理家が監修

作成時のポイント

リーンキャンバスを作成するときには、顧客セグメントから順番に埋めていくことが推奨されていますが、ほかにもいくつかポイントがあります。ここではキャンバスを描く際に知っておきたい3つのポイントを紹介します。

一度にすべての項目を考える

リーンキャンバスは、9つの項目を一度にすべて考え、15分程度で仕上げます。リーンキャンバスは仮説と検証を重ねて改善していくものなので、そもそも最初から完璧なものはできません。修正や変更をしやすいようにデジタルデータにしておくといいでしょう。

最初はすべて埋めなくてよい

リーンキャンバスは時間をかけて成長させていくものなので、最初からすべて埋める必要はありません。ただしビジネスモデルの要となる、顧客セグメントと課題は必ず埋めましょう。そもそも誰のどんな課題を解決したいのかが明確でなければビジネスをスタートできません。

いつ時点のものか記録する

リーンキャンバスを作成する際には、「いつ時点を想定しているのか」を記録しておきましょう。ビジネスフレームワークでは半年後や1年後の姿を思い描いていることが多いです。リーンキャンバス作成の際はいつ時点を想定ものかを記録しておくことで、想定と比べてどの程度進捗しているのか、ズレがあるなら何が原因なのかを考えられるようになります。

まとめ

リーンキャンバスは、ビジネスの要素を9つの項目に分け、1枚の紙に書き出し俯瞰することで理解をするためのフレームワークです。ビジネスモデルキャンバスと異なり、確定要素が少ないスタートアップ企業が仮説を立てながらビジネスモデルを構築するのに向いています。

リーンキャンバスは、初めから正しく緻密に完成させる必要はありません。改善と修正を繰り返すことを前提に、全項目が埋まらなくても短時間で作成することがポイントです。キャンバス上でアイデアを整理・可視化して、新しいビジネスにチャレンジしていきましょう。

この記事を書いた人

QEEE編集部

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