人事

雇用維持・創出に ワークシェアリングの基本や導入時のポイントを解説

2021年04月02日

ワークシェアリング

雇用維持や雇用創出といった観点で「ワークシェアリング」が注目を集めています。ワークシェアリングでは一人の従業員が抱えていた業務を複数人に配分することになるため、働き方改革といった面でも重要な制度ではありますが、ポイントを抑えなければ従業員の反発を招きかねないのも事実です。
そこで今回の記事では、ワークシェアリングの基本から導入時の流れ・ポイントを解説していきます。デメリットを最小限に抑えながら効果を出すためにも、今回の記事が参考になれば幸いです。

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとはワーキングシェアとも呼ばれ、一定量の業務、もしくは勤務時間の割り振りを再分配することで、雇用できる人数を増やしたり、偏った労働環境を改善したりする考え方を指します。
例えば、出産や育児で一時的に時短で働きたい、またはそのサポートをする人員を雇いたいなど、一定量の作業や業務、勤務時間を分け合うことで、ワークライフバランスの良い労働環境を構築できます。
その他にも明らかに残業が多く過労気味な従業員の仕事を分け合うことで、雇用できる人数を増やすことにもつながります。ワークシェアリングは新たな雇用の創出とともに、過労気味な従業員本人やその家族を守る手段としても有用と言えます。

注目が集まる背景

ワークシェアリングに注目が集まる背景には、労働者の過労死と失業というアンバランスな状況があります。
現在、ひとりの労働者に業務が偏ったことから過労死してしまうという社会問題が発生しています。一方、昨今の社会情勢の中で失業してしまい、中々再就職に繋がらない方もいらっしゃいます。このようなアンバランスな状況に対し、仕事を分け合い雇用を維持・創出するワークシェアリングという制度を用いることで、社会問題が改善できると期待されて普及しはじめました。
その他にも、ワークライフバランスを重視する生き方が尊重され始めたことも理由のひとつと言えます。誰もが働くためだけに人生を捧げるのではなく、仕事以外のプライベートな時間を大切にしながら人生を楽しむこと、そのために時間とお金のバランスを調整することがワークシェアリングによって実現できるからです。

ワークシェアリングの特徴

次にワークシェアリングの特徴として、メリットとデメリットを簡単に説明します。

メリット①長時間労働の解消

ワークシェアリングは長時間労働を解消できるのがメリットです。企業や組織において、経験やスキルによって属人化まではいかなくても、特定の担当のみ作業量や業務量、勤務時間が肥大することがあります。それらを2人、3人と複数人で分け合うことで1人の負担を減らしながら、無駄なく雇用を創出することができるのです。
また、専門的な仕事や役職の場合、そのポストが空かないまま後任の雇用や育成ができないというケースの改善にも役立ちます。ワークシェアリングによって作業や時間を分け合いながら、並行して社員教育や研修で引き継げる仕組みを整えることで、特定の人に依存しない、または属人化させない環境作りにもつながります。

メリット②柔軟な働き方に対応可能

ワークシェアリングを活用することで、昨今注目されている働き方改革などの柔軟な働き方に対応可能となるのもメリットです。ワークシェアリングによって家族との時間を創出すること、もしくは日々に時間的な余裕を生み出すことで、従業員満足度の向上イメージアップも期待できます。
例えば、短時間での働き方が可能となるため、出産や育児でフルタイムでは働けない人、もしくはそれらをフォローする人など、お互いがお互いの家庭環境に無理なく働ける勤務時間で働けるようになります。その他にも有休の連続取得や半日出社、半日休みなど柔軟なシフトが組めるようになることから、従業員全体のワークライフバランスを整えることが可能です。

デメリット①賃金格差の発生

ワークシェアリングのデメリットは賃金格差が発生することです。例えば、ワークシェアリングが適用できる仕事と適用できない仕事がある場合、ワークシェアリングによって残業が減って給与も減る人と、残業は減らないが給与も減らない人で格差が生まれてしまいます。
ワークシェアリングによって勤務時間や残業が減っても日々の生活に困らない人がいる反面、残業をフォローする部分の短時間しか働けず、まとまった収入を得られず困窮する人が生まれる可能性も否めません。そのため、賃金格差の影響で副業やダブルワークをしなければならず、心や体に負担となり、本業にネガティブな影響となるケースも存在しています。

デメリット②制度見直しの手間

ワークシェアリングを導入するためには既存の制度見直しの手間というデメリットがあります。短時間勤務とフルタイム勤務の給与や時間の調整、各種手当ての拡充、業務体制や命令体系の見直しなど多岐に渡ります。
雇用する側も雇用される側も見直した制度によって働き方だけでなく、日々の過ごし方や暮らし方に変化を求められることから、ストレスによる健康への影響も懸念されます。
同時に制度の見直しが雇用条件や給与に及ぶことで、従来の雇用条件との違いから優秀な人材を手放さなければならない結果となる可能性もあります。

デメリット③従業員からの反発の可能性

従業員の私生活の状況によっては、ある程度の残業込みでローンや学費の支払いを組むことがあります。そのため、月々の収入が下がってしまうことに対し、従業員から反発を受ける可能性も否めません。
ワークシェアリングは仕事を分け合うこと=一定の給与コストを分け合うということです。企業や組織としても、ワークシェアリングを導入したからといって、給与の原資が増える訳ではないと留意しておく必要があります。

ワークシェアリングの種類

次にワークシェアリングの種類を4つご紹介します。

緊急避難型

緊急避難型の雇用維持型は企業や組織において、通常時の利益や売上を確保できない、もしくは一時的な資金繰りの悪化などの緊急時に対応するためのタイプです。
従業員ごとの仕事量および勤務時間を少なくして再分配し、雇用を維持するのが目的です。従業員側としては雇用が維持されること、収入が途絶えないことがメリットです。雇用する側としても雇用を維持することで状況が改善した時にすぐに事業を再開できるという安心感があります。

中高年対策型

中高年対策型の雇用維持型は定年の延長や定年後の再雇用に対応するためのタイプです。昨今では年金支給の年齢の引き上げなど、今までの定年の年齢では不安の残る状況に陥っています。
定年の延長や定年後の再雇用時に短時間かつ出勤日を少なくすることで雇用が維持され、従業員側の不安が少なくなります。雇用する側としても経験や知識のある人材をコストを抑えながら雇えるのがメリットです。

雇用創出型

雇用創出型とは失業した人のために勤務時間の短縮して雇用を創出することを目的としたタイプです。例えば、フルタイムで働く人の仕事を分けて、2人で作業するような働き方であるジョブシェアリングが該当します。

多様就業対応型

雇用創出型に似ているタイプに雇用している従業員に短時間の勤務を割り当てる多様就業対応型というタイプがあります。こちらは出産や育児、もしくは介護などを理由にフルタイムは働けなくても、短時間のパートなら働ける人を継続的に雇用する際に用いられます。
従業員側は失業せず、無理なく収入を得られるのがメリットです。雇用する側も知識や経験のある人材を失わずに済むというメリットがあります。

ワークシェアリングの先進事例

次にワークシェアリングの先進事例を海外と国内に分けて、それぞれ簡単にご紹介します。

海外の事例

ワークシェアリングの海外の先進事例では、オランダを中心にドイツやフランスで取り組みが進んでいます。
オランダでは雇用創出を目的としたワークシェアリングを推進すると同時に、実質的な所得の減少に対応するため減税措置を実施しました。結果的に経済危機を脱することにつながり、オランダは失業率を一桁台まで低下させることに成功しました。
その他、ドイツでは時短を導入するタイミングでワークシェアリングを推進しました。時短によって雇用を創出しながら、業績悪化に対する緊急措置として雇用を維持することも目的だったと言えます。また、フランスでは雇用の改善のため、労働時間の短縮の指導や奨励する法律を作り、早期に実施した企業に社会保障負担の軽減措置が取られました。
オランダ、ドイツ、フランスはその後、一人当たりの年間平均労働時間が大幅に改善されるとともに、失業率の低下と雇用者数の増加という結果につながっています。

参考:内閣府|平成13年度 年次経済財政報告

国内の事例

ワークシェアリングの国内の先進事例では、ITバブルの崩壊のタイミングで緊急非常事態のため「工場週3休制」を導入したケースがあります。
工場のラインに時間的な余裕が生まれ、若手従業員の育成、能力開発などの研修カリキュラムを実施することで、生産性の向上に取り組んだ事例です。労働時間の短縮につながるだけでなく、緊急非常事態の雇用維持を実現させるという結果を生み出しており、まさに雇用維持型のワークシェアリングの成功事例と言えます。
また、労働時間の短縮によって休日が月間で4日増えるものの、1日分は有給休暇扱いとし、会社都合による休業日においては休業補償なども行っています。
結果として一時的に給与は下がったものの、希望退職やリストラを行わなかったことで、従業員の理解を得られています。雇用する側としても、事態が好転した時に対応できる体制を維持することにもつながりました。
これらのことから、2021年現在、コロナ禍において業界や業種問わずに耐えている状況を鑑みると、企業や組織の存続のみならず、従業員とその家族を守る方法の一つとして、雇用維持型のワークシェアリングについて知っておくべきと言えます。

参考:厚生労働省 - わが国におけるワークシェアリングの実践例

ワークシェアリングを実際に導入するために

次にワークシェアリングを実際に導入するための流れや考え方、そしてワークシェアリング導入を成功に導くポイントをご紹介します。

ワークシェアリング導入の流れ

まずはワークシェアリングの導入の流れを4段階に分けて簡単に説明します。

①現在の業務の整理

ワークシェアリングを導入するためには、現在の業務の整理を行う必要があります。
基本的に企業や組織における業務は何らかの作業の積み重ねです。「どのような手順で行われているのか」「業務全体の流れの中でいつ行われるタスクか」「重要性および優先度はどのくらいか」などの観点で、作業をタスク単位で細分化していきます。
同時に属人化している業務の洗い出し、顧客対応においても特定の営業や担当に依存していないかなど、特定の従業員がいなければ業務が回らないような箇所についてもチェックすべきです。このタイミングで不要な業務や非効率的な作業の削減をおすすめします。
出産や育児、介護だけでなく、休暇で旅行や趣味に費やす時間を創出するためにも、誰かがいないと回らないような環境から脱することを意識しましょう。

②ワークシェアリングに対応する業務を見極める

業務や作業によっては、ワークシェアリングができないものがあるため、次の段階としてワークシェアリングが可能な業務を見極める必要があります。
業界や業種による差はありますが、属人化を最小限にしたとしても、役職や権限、もしくは資格や経験を必要とする作業や業務など、ワークシェアリングに向かないタスクも存在するためです。
ワークシェアリングできる作業と範囲、そして手順を精査しながら、必要に応じて社員教育や研修で補助できる人材を育成できないかも検討しましょう。できないことをできるようにする、できることはみんなで共有して助け合えるようにするイメージです。

③ワークシェアリング実施のマニュアルを定める

ワークシェアリングが可能な業務の見極めが終わったら、次はワークシェアリングを実施するためのマニュアル作りです。マニュアルの解釈が人によって異なるといった状況は避けなくてはなりません。基本的には年齢・性別・経験といった点に関係なく、マニュアルを読めば誰もが同じことができレベルで作り込みましょう。

④KPIを定め評価を行う

ワークシェアリングを導入する際、目標となるKPIを定めて、効果測定や評価を行う仕組みも考えておきましょう。

  • 全体的な残業時間の削減
  • 離職率の低下
  • 勤続年数のアップ
  • 従業員満足度の向上
  • 有給休暇の取得率アップ
  • 産休や育休の取得率アップ
  • 有給休暇の連続取得
  • 在宅ワーク率


上記は一例ですが、ワークシェアリングの目標・KPIは数値で表せる項目がおすすめです。

ワークシェアリング導入を成功に導くポイント

ワークシェアリングを導入に導くポイントは入念な検討で不公平感を低減することです。

  • フルタイムと短時間の給与の差
  • 在宅ワークと通勤、もしくは出社する人の不公平感
  • 実務レベルでの作業量や業務量の負担の差
  • 忙しい人と忙しくない人で賃金の差がないこと
  • 数値的に評価しにくい作業や業務への新しい評価基準


上記のように不公平感を生み出すポイントはたくさんあります。誰かが楽をして、誰かが苦しい思いをすること、同じく楽をしている人が給与が高く、苦しい人が給与が低くなるようなことは絶対に避けるべきです。
同様にワークシェアリングによって優秀な人材が思ったような給与を得られず、退職や転職してしまうことのないよう配慮することも忘れないでください。

まとめ

今回はワークシェアリングに関する基礎知識や先進事例、ワークシェリング導入の流れやワークシェアリング導入を成功させるポイントについてお話しました。
ワークシェアリングは残業を苦に思わない人に取ってみれば、自分の仕事と給与を奪われるようなイメージになりがちです。実際には人間には限界がありますし、何よりもずっと健康で元気に働けるとは限りません。まずは無理をせず、健康に働きつづけられる環境を雇用主と従業員同士で構築するイメージを持ちましょう。そして、時間的な余裕を持つことで、生産性を向上させ、結果として働きやすく、利益を生み出しやすい職場環境を作り上げることを目指してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事がワークシェアリングの導入をお考えの方、ワークシェアリングに興味をお持ちの方のお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

QEEE編集部

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