生産管理

製造業のDXの基礎知識|DXに必要な技術、成功事例を紹介

2021年03月24日

DX製造業

製造業におけるDXはグローバル化の世界で生き残るために求められています。2025年の崖問題も迫るなか、DXによって生産性を向上し新たな価値を生み出すことが求められています。この記事では、製造業がDXを推進するべき理由を詳しく解説し、あわせて、DXを成功させた製造業の事例もご紹介します。

製造業におけるDXとは

製造業におけるDXは、IoTやAIを活用して工場をスマート化したり、新たな製品を生み出すことです。

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日本では派経済産業省が2018年に「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を公表、DX推進ガイドラインやDX推進指標を作ってきました。
まずDXとは、その概念と定義の成り立ちから解説していきます。

DXとは

そもそもDXとはDigital Transformationの略称であり、簡単にいえばITを利用した変革という意味です。
発祥は2004年で、エリック・ストルターマン教授が提唱した概念とされています。
もともと「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念でした。
この概念を日本人向けに分かりやすく解説したのが、上述の2018年に経済産業省がまとめたDX推進ガイドラインです。
そこではDXは次のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用元:https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf

このDXの定義を簡単にいうと「企業がデジタル技術を駆使して、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること」といったことになります。
そして、DXを実現するために、

  • ビジネスモデルの変革
  • 業務の高度化
  • デジタルによる意思決定の仕組み


が必要とされているのです。

日本の製造業を取り巻く環境

日本の製造業は現在、危機に立たされているといえるでしょう。IMDの「世界競争力年鑑2020」によると、日本の総合競争力は34位と、前年よりも4つ下がっています※1。加えて、生産性・効率性に関していえば、50位後半に低迷しているのが現状です。順位が下がった理由としては、

  • コロナウイルスや災害の影響
  • 人材不足
  • ITの発達による競争環境の変化


が挙げられます。
新型コロナウイルスや災害の影響もありますが、なにより人材不足と競争環境の変化が大きな理由です。
少子高齢化が続く日本において人材不足は深刻であり、大企業・中小企業ともに約7割が不足していると感じています※2。
また、ITやデータ活用状況も2017年と比べて、15.8%から8.4%に減少と足踏みしているのです※3。

「2025年の崖」問題とは

「2025年の崖」問題とは分かりやすくいえば、2025年以降に経済損失が最大12兆円/年になる可能性がある問題を指しています。
「2025年の崖」問題が初めて指摘されたのは、2018年に経済産業省が発表したDXレポートです。
DXレポートでは日本企業の約8割が、レガシーシステムを抱えていると指摘しています。
レガシーシステムとは、古く複雑になってブラックボックス化した、既存の基幹系システムです。
製造業においても、50%以上の機械工場で、設備の老朽化が発生しています。
レガシーシステムが残っていると、

  • 管理の困難化
  • 予算の無駄
  • 国内企業の低迷によるデジタル競争の敗北


といった事態が起こりうるのです。
こういった事態を回避するために、対策が急がれています。

製造業のDXでの代表的技術

製造業がDXを実現するためには、先端技術の導入は欠かせないでしょう。中でも特に注目したい先端技術が、

  • デジタルツイン
  • IoT
  • AI
  • RPA
  • 5G通信


の5つです。
いずれも、製造業のDXに大きな影響を与える技術といえるでしょう。
それぞれ製造業においてどのように役立つ技術なのか、詳しく解説します。

デジタルツイン

デジタルツインとは現実と同じ空間を、コンピュータ内にも作る技術です。
デジタルツインの技術を製造に使うことで、リスクの回避などに役立ちます。
例えば、製品の設計にデジタルツインを使えば、関係者のために図面を作成する必要はありません。
さらに組み立て手順などの情報も入れることで、3Dアニメーションによる指示も表示され、より効率的に作業を行えます。
管理の面から見ても、製品をデジタルツインによってリアルタイムで確認できるので、不具合の素早い発見に繋がるでしょう。

IoT

IoTとはInternet of Thingsの略称で、モノをインターネットに繋ぐ仕組みや技術です。
製造にIoTを導入すれば、生産性の向上などの効果を見込めます。
例えば、生産ラインをインターネットに接続することで、進捗管理を効率的に行えるでしょう。
しかし、生産性を向上させるだけではIoTを活かしているといえません。
IoTを活かしきるには入手したデータを活かすことができる、システム環境と経営戦略が必要です。
既存のシステムにIoTを取り入れるのではなく、IoTを前提としたシステムを再構築しましょう。

Al

AIとはArtificial Intelligenceの略称で、いわゆる人工知能です。
AIを製造業に導入するメリットとして、自動化による生産性の向上などが挙げられますが、一番はノウハウの継承でしょう。
例えば検品作業は今まで作業員によって、精度が異なり品質にばらつきがありました。
そこでAIがベテラン検査員の技術を学習することで、検査の平均レベルが向上するのです。
しかし、今の仕事をAIに肩代わりさせるだけだと、DXを実現しているとはいえません。
DXにおいて重要なのはAIで入手した膨大なデータを、どのように活かすかです。

データを活用して新たな価値を創造して始めて、DXが成功したといえるでしょう。

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RPA

RPAはRobotic Process Automationの略称で、決められた業務を自動化するための概念です。
そして、RPAを実現するためのソフトウェアがRPAツールと呼ばれます。
RPAを実現できれば、単純作業を減らして、生産性の向上といった効果を期待できるでしょう。
例えば、数値入力などのデータ収集作業でRPAツールを使って自動化すれば、その時間をデータ分析などに使えます。

もちろんRPAツールを使うだけでもある程度効果が出ますが、ポイントはその先のAIと同時活用する段階です。

この段階をEnhanced Process Automation(EPA)と呼び、例外処理の自動化や機械学習による判断も行えます。

AIのレベルが上がれば、より高度なデータ分析と人間に近い意思決定も行えるでしょう。

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5G通信

5Gとは5th Generationの略称で、IoTの普及に必須な技術であるといわれている技術です。
5Gの特徴として、

  • 高速化
  • 低遅延
  • 同時多数接続


の3つが挙げられ、いずれも4Gよりも高い性能です。
製造業のAIやIoTなどのデータ通信に5Gを採用すれば、さらなる性能の向上が見込めます。
特に、工場など特定の建物内だけで利用するローカル5Gの利活用が進められています。

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製造業のDX成功事例

製造業における実際のDXの取り組み事例が経済産業省によってまとめられています。ここではDXに取り組むためのフローの可視化や人材育成の事例が収められています。

参考:製造業DX取組事例集|経済産業省
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf

ほかに、成功事例としてアウトドアメーカーであるスノーピーク社のERP刷新と化学品メーカー大手ダイセルのAIを活用した生産システム事例を紹介します。

株式会社スノーピーク/ERP刷新

主にアウトドア製品を製造している株式会社スノーピークは海外の売上拡大のために、ERPの刷新を図りました。

既に韓国や台湾にも拠点を構えていましたが、イギリスやアメリカに進出するにあたって、ERPの刷新を決めています。

以前は経営に必要な情報を、リアルタイムで確認できませんでした。

そこでERPを刷新した結果、親会社と子会社とで販売や在庫情報をリアルタイムで共有しています。

さらに、経営方針の決定からプロジェクトのコントロールまで、日本の本社で行えるようになったのです。

参考:欧米子会社設立と同時にクラウド型ERPを導入し スピーディな立ち上げ、グローバル連携を実現
https://www.nttdata-gsl.co.jp/case/snowpeak.html

株式会社ダイセル/「自律型生産システム」

株式会社ダイセルは自律型生産システムを開発して、生産を最適化しました。

システムには製造現場で取得したデータを学習したAIを搭載しており、現場で作業を行う人を支援します。

システムの開発によって、グループ全体で年間最大100億円のコストダウンを達成しました。

さらに、AIが過去のデータを分析し、ベテラン従業員のノウハウを学習するスピードのアップにも繋がっています。

参考:「自律型生産システム」を開発(2020年8月 株式会社ダイセル)
https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20200819.pdf

まとめ

製造業におけるDXの在り方について、詳しく解説しました。

世界にデジタル化の波が押し寄せ、2025年の崖が近づく現代において、製造業のDX実現は急務といえるでしょう。

DXを実現するためには、先端技術の導入は必須です。

しかし、むやみやたらに先端技術を取り入れればよいというわけではありません。

DXの実現には現状の解決だけでなく、企業の文化や経営戦略を変革する必要があります。

よいモノづくりで終わらずに、データを収集してすばやい現場への反映が求められているです。

ぜひ記事を参考にして、積極的にDXの推進に取り組んでみてください。

この記事を書いた人

QEEE編集部

QEEEは、INTLOOP株式会社が運営するビジネスの総合ポータルサイトです。 多様なコンサルティング実績をもつINTLOOPのノウハウを生かし、あらゆる経営課題・ビジネスの悩みを解決するサービスを提供しています。 QEEEマガジンでは、マーケター・人事・エンジニア・営業などの各職種に向けて、SaaS比較やビジネスコラムなどのコンテンツを各領域のスペシャリストが発信しています。

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