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ローカル5Gとは?企業単位で利用できる5Gのメリットや利用方法を解説

2021年08月24日

ローカル5G

ローカル5Gとは

ローカル5Gとは、企業や自治体などが個別に構築・運用することができる自営の5Gネットワークのことです。通信キャリアが提供する5Gの通信サービス(パブリック5G)とは異なり、「ローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築するものである(総務省情報通信白書より)」というコンセプトで、企業や自治体が自ら国指定の無線局免許を取得することにより、建物内や敷地内で独自に5G基地局を構築・運用することができます。

ローカル5Gは外部のネットワークや他のエリアの影響を受けにくく、不正アクセスなどセキュリティリスクも低いのが特徴です。そのため、ローカル5Gを活用しIoTやスマートファクトリーなど製造業の生産性向上や新たな利便性のあるサービス、さらにDXにつながることが期待されています。

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5G(第5世代移動通信システム)とは

5G(第5世代移動通信システム)には、高速、多数同時接続、低遅延の3つの特徴があります。これらの5Gの特徴を説明していきます。

広い帯域を利用した高速通信

5Gは高周波数帯を利用して幅広い帯域でデータの送受信ができるため、大容量の高速通信が可能です。5Gは規格上では下り20Gbps、上り10Gbpsが最大通信速度となり、4Gの最大通信速度が約1Gbpsであることと比較すると、最大約10倍の速度で通信ができることになります。

例えば約2時間の映画をダウンロードするのに、現行のLTEでは5分かかるのに対し、5Gでは3秒でダウンロードできると言われています。

多数同時接続ができる

5Gでは1平方kmあたりの最大接続機器数が100万台となっており、4Gに比べると30〜40倍の端末を同時に接続することができます。

これにより、多くの機器監視やセンサー導入などIoT分野での活用がより可能になります。

低遅延でリアルタイムな通信ができる

5Gでは1ミリ秒程度と遅延が少なく、4Gの約10倍の精度となります。

これにより遠隔地でもよりリアルタイムに通信が可能になり、自動運転の制御やロボットの遠隔操作、遠隔医療などの分野で効果が期待されます。

ローカル5Gと5G(パブリック5G)の違い

ローカル5Gとパブリック5Gとは同じ通信規格ですが、利用目的の点で明確に区別されています。ここではローカル5Gとパブリック5Gの違いについて説明します。

敷地内、建物内での利用が前提

ローカル5Gは、のちに述べるように免許制ですが、それは限定されたエリア、例えば敷地内・建物内で利用する前提となります。通信キャリアが提供する5G(パブリック5G)は公共の通信ですが、ローカル5Gは「自己の建物」「自己の敷地内」での利用に限られます。

地域や産業の個別ニーズにより構築

ローカル5Gは地域や産業のニーズに伴って企業や自治体が個別に構築します。工場や建設現場でのIoT、鉄道や空港での監視や自動搬送システム、病院での遠隔診療、大型スタジアムでの映像配信などそのニーズは多岐に渡ります。

パブリック5Gは都市部など公共通信ニーズの高い地域から整備され、人口の少ない地域などは整備までに時間を要すると考えられまう。ローカル5Gは、パブリック5Gの整備を待たずに、企業や自治体のニーズに応じて構築し5Gを利用開始できます。

通信キャリア以外が構築

ローカル5Gは、通信キャリアではない企業や自治体、個人が、免許を取得することで構築できます。

自社で独自の5Gを構築するほか、大手電機メーカーやSIerが免許を取得し、企業や自治体向けにローカル5Gの導入、設計、構築、運用などのサービスを提供するといった方式で構築されます。

ローカル5Gのメリット

パブリック5Gではなくローカル5Gで構築するメリットには、5Gの早期活用、キャリアのネットワークの影響を受けにくい構成、広範囲をカバーできる設計、セキュリティ強化が挙げられます。

早期に5Gの活用をはじめられる

ローカル5Gのメリットの一つ目は、企業や自治体で自ら構築するため、早期に5Gの活用を始めることができる点にあります。

通信キャリアが構築するパブリック5Gは、通信キャリアによって構築エリアの優先順位づけが行われています。そのため、基本的には都市部から整備され、エリアによってはかなり先まで整備されない、自社で必要な建物内では通信が届かないこともあり得ます。

ローカル5Gは企業等のニーズをもとに構成するため、必要な場所に必要な構成ができます。

通信キャリアの影響を受けにくい

ローカル5Gのメリットとして、独立したネットワークとして構築されるため、通信キャリアの基地局トラブルやネットワークのトラブルを受けにくいことがあります。

パブリック5Gでは、多くのユーザーが回線を使用したために接続不可になったり、基地局の通信設備の故障で通信不可になるなどのトラブルがあり得ます。またパブリック5Gの構成次第では、自社で必要なエリアに電波が届かない可能性もありますが、ローカル5Gではそうしたリスクも回避できます。

Wi-Fiよりも広い面積をカバーできる

ローカル5GはWi-Fi通信よりも広範囲をカバーすることができるのもメリットです。大規模な工場や大型スタジアムなどWi-Fiではカバーしきれなかった場所も、ローカル5Gであればカバーできます。

また、Wi-Fi通信よりも高速、低遅延、多数同時接続が可能で、安定した品質が期待できるため、より活用範囲を広げることができるでしょう。

セキュリティを強化できる

ローカル5Gは外部のネットワークから切り離されて運用され、周波数帯によっては外部への電波の漏洩がないため、不正アクセスやデータの漏洩などのリスクを軽減し、セキュリティを強化することができます。

ローカル5Gのデメリット

ローカル5Gのデメリットにはコストがかかる点、障害物に弱い点、免許申請が必要な点が挙げられます。

コストがかかる

ローカル5Gは個別のソリューションとして企業や自治体自らが構築する必要があるうえ、Wi-Fiなど他の通信設備に比べると高額なコストがかかります。2020年にスタートしたばかりの通信サービスのため、システム構築費用がどの程度になるのか情報が少ないことも懸念材料の一つです。

構築費用とは別に、設置方法や無線局の種類などによって電波利用料も必要となります。

2020年12月の周波数帯の追加の効果

ローカル5Gの周波数帯として、2020年12月から、それまでの28.2-28.3GHzに加えて新たに4.6〜4.9GHz及び28.3〜29.1GHzの周波数帯が追加されました。これにより基地局の費用が大幅に削減できることが期待されています。

追加された周波数帯では通信方式が異なるためシンプルな仕組みで運用することができ、少ない通信機器数で済むとされています。

参考)新たな周波数のローカル5G用の無線局免許申請受付開始|総務省
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/press/2020/1218r1.html

遮蔽物・障害物に弱い

ローカル5Gに使われる周波数帯のうち、28.2〜28.3GHzの周波数帯は直線型の電波であるため、遮蔽物や障害物に弱いという特性があります。

遮るものがなければ広い敷地内でも電波が届きやすく安定的な5Gの通信が行えますが、遮蔽物や障害物がある場合は通信が不安定となり、5Gのメリットを享受できない可能性があります。

免許申請が必要

ローカル5Gを利用するためには総務省の要件に従い、免許申請を行う必要があります。土地や建物の情報、設置目的や設置場所、設計情報など添付資料が求められます。

また、申請には手数料も必要です。免許申請から取得までは標準的な処理時間で1.5ヶ月と提示されているため、取得までの納期も考慮する必要があるでしょう。

ローカル5Gの利用用途

ローカル5Gの利用用途にはスマートファクトリーや遠隔操縦、遠隔医療、監視など、そしてサプライチェーンマネジメントもあります。また、CATV事業者が優先ラスト1マイルの手段として、東京都や徳島県では中小企業

向けの実証実験環境構築のためなどとして免許を取得しています。

ここでは主なローカル5Gの利用用途をご紹介します。

工場(スマートファクトリー)

工場でローカル5Gを導入することにより、工場内の膨大な機器データを収集したり制御することができ、製造状況のリアルタイムな把握やプロセスの自動化、トラブルの素早い検知などが可能になります。

自動化や最適化による作業効率や生産品質の向上が見込め、スマートファクトリーの実現に活用できるでしょう。

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遠隔操縦

ローカル5Gではリアルタイムな通信が可能となり、建設現場や災害現場などでの遠隔で重機の操作や自律運転を実現することができます。

大容量で低遅延のネットワークにより、遠隔操作でも高いレベルでの映像伝送が可能です。これにより、現場の作業効率や安全性を向上させることができるでしょう。

サプライチェーンマネジメント

ローカル5Gの活用により、製造業における物流やサプライチェーンにおけるリアルタイムな情報の収集や共有が可能になります。需要への素早い対応や在庫の最適化、リードタイムの短縮などにより最適なバリューチェーンの構築を実現します。

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ローカル5Gサービスを利用するには

ローカル5Gの導入には専門的な知識とノウハウ、免許申請などの手続きのほか、基地局等の機器のコストが高く、中小企業が独自で構築することは難しいといえます。企業や自治体でローカル5Gを導入したい場合は、SIerなどが提供する構築支援やソリューションを利用するのが良いでしょう。

ここではローカル5Gを利用するための方法をご紹介します。

ローカル5Gのサービス提供事業者を利用

ローカル5Gのサービスは、大手メーカーや通信事業者などがソリューションとして提供しています。

これらは、運用ノウハウや専門人員を提供するだけでなく、基地局などの機器もそれぞれでまとめて用意することになるため、個別に用意するよりも割安になる効果も期待できます。

例えば、NECは「「マネージドサービス」では、ローカル5Gネットワークの機器(コア、基地局など)から運用保守サービスまで含めて、月額100万円から提供」としています。

参考)NEC、ローカル5Gをサービス型で提供開始(2020年11月26日プレスリリース)
https://jpn.nec.com/press/202011/20201126_02.html

ローカル5Gに関する助成金や支援施設

ローカル5Gの導入に利用できる助成金があります。また、支援施設ではローカル5Gに関する技術的な支援や新しいサービス開発の提供が期待できます。

5Gによる工場のスマート化モデル事業(公益財団法人東京都中小企業振興公社)

公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する5Gによる工場のスマート化モデル事業では、スマートファクトリー実現を目指す中小企業対して、5Gの導入や運用にかかる費用の一部助成があります。

従業員数300名以下または資本金3億円以下の製造業で、ローカル5Gを活用した生産方式の改善や効率化、ビジネスモデルの革新など、製造工場におけるモデルケースとなるような先駆的な事業が対象です。助成限度額1億2,000万円とする5分の4の助成率で、助成対象期間は最長3年。
※申請期間:2020年11月17日から2021年2月15日まで(2021年1月時点)

DX推進センター(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター)

東京都と地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが提供するDX推進センターは、地方自治体はつのローカル5G基地局免許を取得した基地局です。ローカル5Gの技術支援や活用事例の創出、開発製品の性能評価など、中小企業によるローカル5Gやロボット、IoTなどの活用支援を実施していくことが期待されています。

まとめ

ローカル5Gの導入により、これまでのWi-Fi通信や4G通信に比べてより高速、低遅延で多くの端末が同時接続できるネットワークが活用できます。ローカル5GによってIoTやスマートファクトリーなど、新しいビジネスモデルの創出などが実現できるでしょう。

この記事を書いた人

QEEE編集部

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